商標制度の概要
商標制度は、商標(商品やサービスの名前やロゴマークなど)を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、産業の発達に寄与し、一方で消費者の利益を保護しようとするものです。
消費者はもちろんのこと、商品やサービスを提供する企業が円満な経済活動を行っていくためには、ある商品やサービスに触れたときその商品やサービスは、だれが製造又は提供したものなのか、その商品やサービスの質としてはどのくらいのものが期待されるのか、といった事柄が分かる指標が必要となります。
例えば、自社製品のマークと同じようなマークを他社がつけて粗悪品を製造販売した場合、それまで築き上げてきたブランドイメージが損なわれるのみならず、間違ってその粗悪品を購入した消費者は不利益を被ってしまいます。
そこで、商標制度は、商標を保護することを通じて、商品やサービスの提供側である権利者のみならず、商標が付いている商品やサービスを利用する消費者の保護をも目的としています。
商標とは何ですか?
自社の取り扱う商品やサービスを他社の商品やサービスと区別するための目印(識別標識)です。
私たちが商品を購入したりサービスを利用したりするとき、企業のマークや商品・サービスのネーミングである「商標」が目印となります。一方、企業にとっては、「商標」は消費者に自社の商品やサービスを他社のものと区別して購入してもらい、また、自社の商品やサービスが信頼のおけるものであることを表す目印となるものす。商標は、「もの言わぬセールスマン」と表現されることもあり、商品やサービスの顔として重要な役割を担っています。そして、ブランドを確立するための基本的な権利でもあります。
商標の種類
商標は文字だけしか登録できないと思われている方も多いのですが、文字以外にも図形や立体なども登録できます。また、モノクロのみならずカラーの商標の登録も可能です。
商標の種類は、文字や図形のような商標を構成する要素によって、次のように分けることができます。
①文字商標 |
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②図形商標 |
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③記号商標 |
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④立体商標 |
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⑤結合商標 |
※いわゆる非伝統的商標のうち、「動き」、「ホログラム」、「輪郭のない色彩」、「位置」、「音」は新たに保護対象とすべきであるとされ、平成27年中には施行される予定です。
商標はどのような手続きをとれば登録されるのですか
商標の登録を受けるためには、特許庁に対して商標登録出願をする必要があります。出願の申請書類である願書には、使用している又は使用を予定している「商標」の他に、商標の使用をする商品・サービス(役務)を「指定商品」「指定役務」として記載する必要があります。
指定商品・指定役務は特許庁が定める「区分」に従って内容及び範囲が明確に把握できるよう具体的に記載します。
「区分」は用途などに基づき大きく45の分類にグループ分けされています。例えば、「化粧品」について商標登録出願をする場合、「化粧品」は第3類に属する商品ですから、区分が「第3類」、指定商品が「化粧品」となります。
なお、一つの商標の出願では、複数の区分に属する商品やサービス(役務)を指定することができますが、一つの出願では一つの商標の出願しかできません。
指定商品・指定役務は権利範囲を特定する重要な部分なので、慎重に検討する必要があります。商標登録出願は簡単にできると言って、弁理士などの代理人を通さずご自分で出願なさる方がいらっしゃいますが、商品やサービス(役務)の指定が適切になされていない(実際のビジネスの態様と合っていない)ケースがよくあります。これでは、せっかくお金をかけて商標権を取得しても、宝の持ち腐れということになりかねませんので注意が必要です。
商標登録できないものはありますか
①他社の登録商標や有名な商標等と紛らわしいもの、②自社と他社の商品又はサービスとを区別することができないもの、③品質・質などの誤認を生じさせるものは商標登録を受けることができません。
①他社の登録商標や有名な商標等と紛らわしいもの
例えば、出願しようとする自社の商標が他人の登録商標と類似しており、かつ、指定する商品やサービスも似ている場合には、登録が認められません。商標法は、同一又は類似の商品又は役務に使用する同一又は類似の商標について二以上の出願が競合した場合には、最先の出願人にのみ商標登録を認める先願主義を採用しています。つまり、1日でも早く出願した者に権利が付与される「早いもの勝ち」の世界です。
②自社と他社の商品又はサービスとを区別することができないもの
例えば、商品「化粧品」について、「ヒアルロン酸」という商標を出願したとしても、「ヒアルロン酸」は化粧品の原料にすぎず、自他商品を区別するという商標としての機能(識別機能)を果たさないため、商標登録を受けることはできません。
(商品の産地や品質、サービスの提供場所などを普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、記述的商標と呼ばれますが、このような商標を出願しても商標法第3条第1項第3号に該当するとして拒絶されることになります。)
③品質・質などの誤認を生じさせるもの
例えば、商品「時計」について「SWISSTEX」という商標を出願した場合は、スイス製でない時計についてもスイス製であると誤認を生じると判断されることになります。
商標の効力の及ぶ範囲
日本で取得した商標権は日本国内でのみ効力を有します。基本的に商標権は各国ごとに審査を経て各国毎に権利が設定されます。したがって、海外進出の予定があり日本で使用している商標をそのまま使用する場合は、別途外国出願をして商標権を取得する必要があります。
外国での商標権取得について
外国で商標権を取得する方法として、以下の3つの出願ルートがあります。それぞれ、メリット、デメリットがありますので、外国で権利取得を考えている方はご相談下さい。
1. 個別出願
海外各国の特許庁に直接出願する方法です。
2. 国際登録出願(マドリッドプロトコル出願・マドプロ出願)
日本で出願又は登録されている商標を基礎として、出願しようとしている(マドリッド協定議定書の)締約国を指定して国際登録を受けることにより、その国において商標の保護を受けることができます。
国際登録された商標は指定国において、国際登録日から指定国に直接出願されていた場合と同一の効果を得ることができます。
3. 欧州共同体商標出願(CTM)
ヨーロッパ諸国での商標登録を希望される場合は、欧州共同体商標(CTM:Community Trade Mark)の制度を利用することができます。OHIM(欧州共同体商標意匠庁)に対して、1件の商標登録出願をすることによりCTM加盟国全体をカバーする商標権を取得することが可能な出願です。