フリーペーパーのビジネスモデル:「東京メトロ」商標事件を振り返る
こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
今日は、有名な「東京メトロ」商標事件(知財高裁H19.9.27日判決) について振り返ってみたいと思います。
この事件は、いわゆるフリーペーパーの商品性が問題となった事件でした。
事の発端は、第16類「新聞・雑誌」を指定商品とする登録商標「東京メトロ」(権利者は個人)に対し、東京地下鉄株式会社が、商標が使用されていないとして、不使用取消審判を請求したことにあります。
特許庁は、商標「東京メトロ」が使用されていた新聞(フリーペーパー)が、市場において独立して商取引の対象として流通に供されたものとは認めらず、審判の請求に係る指定商品「新聞、雑誌」のいずれにも含まれない商品と判断しました。つまり、商標「東京メトロ」が指定商品に使用されていないと判断し、登録を取り消しました。
本件は、商標権者が特許庁の審決の取消を求めて知財高裁に訴えたというものです。
裁判所は、【本件新聞のような無料紙は配布先の読者からは対価を得ていないが、記事とともに掲載される広告については広告主から広告料を得ており、これにより読者から購読料という対価を得なくても経費を賄い、利益が得られるようにしたビジネスモデルにおいて配布されるものである】ので、本件のようなフリーペーパーも商取引に供される商品に該当すると判断しました。
その結果、商標「東京メトロ」は指定商品に使用されていたと認定され、特許庁の審決は取り消されました。
ところで、この「フリーペーパー」ですが、無料でコンテンツを需要者に提供しながら、広告料で稼ぐというビジネスモデル、なかなか興味深いですね。
スウェーデンのストックホルムで1995年にスタートした日刊無料紙「Metro」は、今では世界中の都市で手に入るフリーペーパーです(上記の「東京メトロ」とは関係ないです)。ある本で読んだことがあるのですが、「Metro」は、通勤者が移動中に読める程度の手軽な新聞とすることにより編集コストを削減するとともに、公共交通機関や駅などで配布することにより大きな部数を確保したそうです。
通常の新聞についても、いまやネットで無料で読める時代になってきていますし、このようなフリーペーパーが出回るようになると、なかなか収益を上げるのが難しくなってきているのではないでしょうか。
今日は以上です。