「バイオベンチャーと投資家の対話促進のための情報開示ガイドブック」が公表されました

「バイオベンチャーと投資家の対話促進のための情報開示ガイドブック」が公表されました

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

バイオベンチャーと投資家の対話促進のための情報開示ガイドブックの表紙
引用:バイオベンチャーと投資家の対話促進のための情報開示ガイドブック

2021年3月4日に、経済産業省から「バイオベンチャーと投資家の対話促進のための情報開示ガイドブック」が公表されましたので、今回はそれについて書きます。

「バイオベンチャーと投資家の対話促進のための情報開示ガイドブック」はこちら

このガイドラインは、創薬型ベンチャーが継続的な資金調達を行うに当たって、投資家が創薬型ベンチャーを適切に評価するために必要な非財務情報を中心に、創薬型ベンチャー自身が開示する情報の質を高め、「攻めの情報開示」を行うためのポイントを整理することを目的に作成されたものとなっています。

さて、このガイドブックの内容ですが、次のような目次となっています。

  1. 本ガイドブックの概要
    1. 本ガイドブックの背景・目的
    2. 本ガイドブックの使い方
  2. 投資家目線で求められる開示内容
    1. 投資家目線で求められる開示項目
    2. 情報開示資料の構成・ストーリー
  3. 投資家目線で求められる情報開示のポイントと開示例
    1. 会社概要
      1. 主要メンバー・ガバナンス
      2. コーポレートストーリー
      3. 事業領域
      4. 事業実績及び進捗
      5. 組織体制
      6. 論文・学会発表等
      7. 各ステークホルダーとのコミュニケーション
      8. 上場関連・資金調達状況
      9. 前期ハイライト
      10. リスク
    2. パイプライン
      1. パイプラインの概要
      2. 疾患・技術概要
      3. 試験概要
      4. 市場規模
      5. 競合環境
    3. 今後の見通し
      1. 直近の達成目標
      2. 将来ビジョン

詳細は、このガイドブックをご覧になっていただければと思いますが、このガイドブックには、次のように、各項目における開示の趣旨・ポイントが簡潔にまとめられています。

(1)主要メンバー・ガバナンス
創薬型ベンチャーは研究開発というサイエンスの側面と、企業経営というビジネスの側面を持ち、それらを同時に推進していくビジネスモデルである。そのため、投資家は、創薬型ベンチャーが持つ技術そのものについては勿論のこと、研究開発と事業を推進できる体制かどうかを判断するために、参画しているメンバーについて注目している。これらの情報は、投資家が企業価値を推定する上で大切な情報であり、投資判断に大きな影響を与え得ることから、開示することが望ましい。

(2)コーポレートストーリー
企業を継続的に発展させていくことを投資家に示し、投資家から投資価値があると判断されるためには、過去から現在に至るまでの歩みや経営理念に基づいた未来への成長シナリオが明確に位置付けられていることが重要である。技術開発、人口動態、経済成長や法改正など、外部環境の変化も踏まえた一貫性のあるストーリーであること、可能な範囲で定性・定量的な目標等を明確に示すことが望ましい。

(3)事業領域
事業領域は、どのような顧客のどのようなニーズに対して、自社の技術の強みをどのように提供するかを示す情報であり、投資家が創薬型ベンチャーの事業の全体像を把握する上での基礎となるため、開示することが望ましい。事業概要については、現在の事業を行うに至った経緯、自社の有する技術等の強みや背景等を簡潔に説明すること、ビジネスモデルについては、その技術等を用いてどのような顧客に対してどのような価値を提供するのかなど、利益を生み出す収益構造を視覚的に分かりやすく示すことが大切である。

(4)事業実績及び進捗
投資家は、企業の研究開発の進捗過程、アライアンス契約の締結やその他イベントの情報から、企業のルーツや過去の戦略を時系列で理解し、将来を予想する。これまで企業が順調に事業を進めてきたかどうか、どのような苦難を乗り越えてきたのか等はその企業独自の歴史であり、投資家が企業を分析する上で重要な項目であるため、開示することが望ましい。なお、ここで開示する事業実績及び進捗については、1.(2)のコーポレートストーリーを裏付ける内容となっていると良い。また、事業が複数ある場合には事業ごとにそれぞれ分けて開示することが望ましい。

(5)組織体制
創薬型ベンチャーの社内外の組織体制は、取り組む疾患領域やモダリティによって企業ごとに様々であり、プレーヤーが多岐にわたることが多い。投資家が創薬型ベンチャーの事業推進を支える体制基盤の全体像を把握する上で、基本的に開示が必要な情報である。

(6)論文・学会発表等
創薬型ベンチャーの企業価値の大部分は開発品や保有技術に対する評価であり、論文・学会発表等の内容は、投資家の投資判断や創薬型ベンチャーの技術的・臨床的ポテンシャルの理解に重要な情報となるため、開示することが望ましい。

(7)各ステークホルダーとのコミュニケーション
ステークホルダーは、研究開発から上市後にかけての様々な場面において企業の意思決定や事業活動に関与し影響を及ぼすため、企業にとってはステークホルダーとの継続的な関係強化が求められる。投資家にとっては、規制当局との交渉など事業が円滑に進んでいるのかを判断し、上市後の売上の伸びがどれほど期待できるか等を予測する上で、参考となる重要な情報であるため、開示することが望ましい。

(8)上場関連・資金調達状況
創薬型ベンチャーの多くは、パイプラインが上市して製品の売上高(製薬企業等にライセンスをした場合はロイヤリティ)が発生するまでは赤字が続くため、投資家からの資金調達を断続的に行う必要がある。どのような投資家から、これまで累積でどの程度の資金を調達してきたかについては、投資家がその企業の経営に関する考え方を理解する上で重要であり、開示することが望ましい。

(9)前期ハイライト
前期ハイライトについては、事業の進捗状況や今後の成長性への影響等を投資家が理解するために開示することが望ましい。特に、当初の目標の達成状況について明確に示し、達成できなかった場合にはその理由についても開示することが望ましい。

(10)リスク
投資家にとっては、リスクは投資判断に関わる重要な情報であり、単にリスクを羅列するだけでなく、企業が抱えているリスクに対して企業がどのような対処をしているか、又はする予定か等の情報が重要になる。

このように、どのような情報を開示すべきかが分かるようになっており、きっとピッチにも役立つのではないかと思います。

バイオベンチャーは、製品を上市して売り上げ(製薬企業等にライセンスをした場合はロイヤリティ)が発生するまで赤字が続くことが多いので、投資家等から継続的に資金を獲得する必要があります。

是非このガイドブックを活用して、資金調達を成功させてください。

弊所では、ベンチャー支援を積極的に行っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

この記事を書いた人

branche-ip