ブレグジットによる英国の産業財産権の影響2
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログに、ブレグジットによる英国の産業財産権の影響について書きましたが、特許庁は、2020年7月28日にその関連情報に関するプレスリリースを行いましたので、今回はそれについて書きます。
関連情報を含めた特許庁のプレスリリース「英国のEU離脱(ブレグジット)による特許・商標・意匠への影響」はこちら
このプレスリリースによると、マドリッド制度・ハーグ制度に基づきEUを指定した係属中の国際登録出願・国際出願及び知的財産権の消尽についての情報が追加されました。
具体的な追加情報は次の情報になります。
- 商標
移行期間中、引き続き、英国はEU商標制度の構成国の一部のままとなり、EU商標による保護は英国に及ぶ。また、マドリッド制度を通じて保護されるEUを指定する商標の国際登録の効果は、引き続き英国に及ぶ。移行期間の終了時(2021年1月1日)に係属中のEU商標出願を有する場合及びマドリッド制度に基づきEUを指定した係属中の国際登録出願を有する場合、出願人は、2021年1月1日の後9か月以内に同等の英国商標を登録するために出願を行うことができる。出願人は、係属中のEU商標出願又はEUを指定した国際登録出願の先の出願日を維持する(離脱協定第59条)。この場合、通常の英国の料金が適用される。 - 意匠
移行期間中、引き続き、英国は欧州登録共同体意匠制度及び非登録共同体意匠制度の構成国の一部のままとなり、登録共同体意匠及び非登録共同体意匠による保護は英国に及ぶ。また、ハーグ制度を通じて保護されるEUを指定する意匠の国際登録の効果は、引き続き英国に及ぶ。2021年1月1日にUKIPOは、 2021年1月1日の直前に保護されたというステータスを有する登録共同体意匠及びEUを指定して保護された意匠の国際登録について、英国登録簿に記録される同等の英国の権利(再登録国際意匠)を付与する。 再登録国際意匠は、英国法の下で出願及び登録されたものとして扱われ、EUにおける元の権利とは別に、申立、譲渡、ライセンス又は更新の対象になり得る。出願人は、2021年1月1日時点で係属中の登録共同体意匠出願を有する場合及びハーグ制度に基づきEUを指定した係属中の国際出願を有する場合、2021年1月1日の後9月以内に同等の英国意匠を登録するために出願することができ、係属中の登録共同体意匠出願又はEUを指定した国際出願の先の出願日を維持できる(離脱協定第56条、59条)。この場合、通常の英国の料金体系が適用される。 - 知的財産権の消尽※
- 移行期間中
EU及び英国において消尽した知的財産権は引き続き両方の地域において消尽したままとなる(離脱協定第61条)。 - 移行期間の終了後
EUにおける取引業者は、英国から商品を調達する際に、権利者に対して消尽を主張することができなくなる。
- 移行期間中
これらを見ると、移行期間中に係属していた商標登録出願や意匠登録出願については、出願人保護の観点から適切な措置となっていると思います(費用は増えてしまいますが。。)。
ただ、注意して欲しいのは、知的財産権の消尽の取扱いです。
移行期間中は、英国では、EU加盟時代と同様に、EU域内で一度販売されたものに関する商標権や意匠権は消尽したものと取り扱われることになりますが、移行期間経過後では、商標権や意匠権は消尽したものと取り扱われなくないます。
したがって、移行期間経過後に、英国領域内で正規品として一度流通した商品であっても、それがEUに輸入された段階で、権利侵害と主張される場合があるということになります。
このように、移行期間経過後は、消尽に関する取扱いが変わりますので、ご注意ください。
弊所では、英国への特許・意匠・商標出願に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。
※知的財産権の消尽とは、あるものに対して、知的財産権の権利者が権利行使(販売、譲渡、許諾、差止請求、損害賠償請求等)をした場合、同一のものに対して、同一の知的財産権に基づいて権利行使をすることができないことをいう。