「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン【追補版】」が公表されました
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2020年6月30日に、経済産業省から「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン【追補版】」が公表されたので、今回はそれについて書きます。
「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン【追補版】」はこちら
「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」とは、同じく経済産業省から2016年11月30日に公表されたもので、産学官連携による共同研究の在り方を政府が強制するものではなく、大学・国立研究開発法人の自発的な取組を促すことを目的に作成されたものです。
そして、今回公表された「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン【追補版】」は、大学等におけるボトルネックの解消に向けた処方箋と、新たに産業界/企業における課題と処方箋を体系化したものとなっています。
さて、この追補版ですが、次のような目次となっています。
- セクションA 大学等への処方箋
- はじめに
- 資金の好循環
- 研究者等の有する「知」への価値付け
- 研究成果として創出された「知」への価値付け
- 必要となるコストの適切な分担
- 知の好循環
- 知的財産権の積極的活用を前提とした契約
- 人材の好循環
- 兼業・クロスアポイントメント制度の活用
- 産学官連携の更なる発展のために検討すべき事項
- 大学等の外部の組織の活用
- 研究・産学官連携に対するエフォートの確保
- セクションB 産業界への処方箋
- はじめに:企業が大学等との連携を行う意義
- 経営層のコミットメント
- 様々な経路でのパートナー探索
- ビジョンやゴールの設定
- 共同研究のマネジメント
- 連携の責任者と窓口の一元化・明確化
- 複層的なコミュニケーションと進捗管理
- パートナーへの投資
- 連携により得られる「価値」への投資
- 大学のマネジメント等に対する適切な支出
- 長期的な人的関係の構築
- 人材交流の深化
- 次世代を担う人材の育成
- 研究成果の事業化
- 共同研究から事業化までの継ぎ目無い接続
- 価値創造のための知的財産の戦略的活用
- はじめに:企業が大学等との連携を行う意義
この目次から分かるように、この追補版は、大学等への処方箋と、産業界への処方箋の2つが解説されています。
例えば、大学等への処方箋には、例えば、次のような課題と処方箋が記載されています。
課題:
大学の予算・会計上既に人件費が措置されている常勤教員が共同研究に関与する対価を企業に要求するに当たっては、①学内や企業への説明上の懸念や、②関与時間の管理の必要性に対する懸念、③事務的なコストの増大に対する懸念、④国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金への影響に対する懸念がボトルネックであると考えられた。
処方箋:
常勤教員の共同研究への関与時間に対する報酬(タイムチャージ)を料金に計上する。その際、企業
との交渉に基づき、実費弁償の考え方ではなく、「研究者の価値」等を考慮した高い水準の単価設定を
行う。
学生を共同研究に参画させる場合についても、雇用契約を締結し、適切な対価を計上する。
共同研究費を支払うことが多い企業側からすると、共同研究費が従来よりも高くなるような処方箋となっており、なかなか納得できないこともあると思います。
しかし、大学側の事情も考慮して、ウィンウィンの関係を構築して欲しいと思います。
一方、産業界への処方箋には、例えば、処方箋が記載されています。
処方箋:
熱意と責任を持った者を連携の責任者とし、産学官連携の窓口を一元化・明確化する。
なかなかこのような人材はいないかもしれませんが、産業界では、このような人材を確保して欲しいです。
このように、大学等・産業界の両面から実務的な処方箋が記載されています。
今後、大学等や産業界と共同研究を積極的に行おうと考えている組織の方は、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」だけでなく、この追補版も是非ご覧になってください。
弊所では、
弊所では、共同研究契約からライセンス契約まで、知的財産に関する契約書の作成から交渉代理まで幅広いサポートを行っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。