「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」が公表されました1

「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」が公表されました1

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン-ノウハウ活用編ーの表紙
引用:農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン -ノウハウ活用編ー

以前のブログで「農業分野におけるデータ契約ガイドライン」をご紹介しましたが、その後農林水産省ではAIに関する契約ガイドラインの検討が進められました。

そして、それらをまとめた「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」が公表されましたので、今回はその中の「ノウハウ活用編」について書きます。

「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインーノウハウ活用編ー」はこちら

さて、このガイドラインですが、農林水産省のWebサイトによると、「スマート農業を普及させるためには、農業者が安心してデータを提供できる環境を整備し、農業分野におけるビックデータやAIの利活用を促進する必要があります。そこで、データの提供者(農業関係者)及び受領者(農業機械メーカー、ICTベンダ等)の契約の考え方及びひな形等の内容とするガイドラインをとりまとました。」とのことです。

日本では、農業従事者の高齢化や人口減少に伴って、農業をシステム化して農業を効率化する必要があると思われます。

農業のシステム化を行うには、農業技術の熟練者の行動のデータ化や、それらのデータを使ったAI化が求められてきています。

その際に、熟練者(データの提供者)とシステム化を行う者(データ受領者)との間で一方に非常に有利な契約が締結されてしまったという事実があると、それが障害となってしまい、農業に関するデータの活用が阻害されてしまう可能性があります。

そこで、農林水産省は、このガイドラインを取りまとめたのだと思います。

さて、このガイドラインですが、①ノウハウ活用編と、②データ活用編に分けてまとめられているので、今回はノウハウ活用編について書きます。
(データ活用編は次のブログに書きます。)

さて、ノウハウ活用編ですが、次のような目次となっています。

  1.  総論
    1.  目的
      1. 農業分野におけるAIの利用と農業関係者等の関わり
      2. 農業分野におけるAI利用の意義
      3. AIを利用した製品・サービスに関する契約等の状況
      4. 目的
    2. 用語解説
      1. 技術的用語に関する解説
      2. 定義・用語の解説
    3. 「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)」との関係
    4. 想定する読者
    5. 読み方
      1. 構成
      2. 読み方
  2. 農業分野におけるAIを利用した製品・サービスに係る契約の基本的事項
    1. AIを利用した製品・サービスに関連する知的財産
      1. 知的財産をめぐる関係の概要
      2. 知的財産の概要
    2. AIを利用した製品・サービスに関連する契約の目的
    3. AIを利用した製品・サービスに関連する契約の当事者
      1. 契約における当事者関係の概要
      2. 農業関係者等
      3. AI研究開発委託者
      4. AI研究開発者
      5. 第三者
    4. AIの研究開発プロセスについて
      1. AIの研究開発プロセスとその特徴
      2. 農業分野におけるAIの研究開発の特殊性
  3. 農業分野においてAIを利用した製品・サービスに関する契約上の留意事項
    1. AIを利用した一般的な製品・サービスに関する契約における特徴と留意点
      1. 問題の所在
      2. AIを利用した一般的な製品・サービスに関する契約における留意点
    2. AIを利用した製品・サービスにおける契約関係
      1. 契約関係の概要
      2. 各契約関係と参照すべき契約ガイドラインの関係
    3. AIを利用した製品・サービスの研究開発場面での契約の当事者に関する留意点
      1. 研究開発当事者間の契約における類型
      2. AI研究開発委託者の類型に応じた委託契約関係の留意点
    4. AIを利用した製品・サービスに関して農業関係者等により提供されるデータ・ノウハウ等
      1. 農業関係者等におけるデータ・ノウハウの重要性
      2. 農業関係者等における知見とノウハウ
      3. 農業関係者等への配慮したデータ・ノウハウ等の取扱い
    5. 個人情報等の対応
  4. 農業分野におけるAIに関するモデル契約書におけるポイント
    1. モデル契約書の提示方針
      1. モデル契約書のポイントの提示方針
      2. タームシートの添付
    2. AIを利用した製品・サービスにおける研究開発場面におけるモデル契約
      1. 農業関係者等が締結するデータ・ノウハウの提供に係る契約
      2. AI研究開発を行う主体間で締結する契約
    3. 農業分野におけるAIを利用した製品・サービスの利用場面における契約
      1. 利用契約の概要
      2. 利用契約における契約項目のチェックリスト
    4. 農業関係者等が提供したデータ等の第三者提供契約
      1. 第三者提供契約の概要
      2. 第三者提供契約における契約項目のチェックリスト
  5. 関連する政策・ガイドライン等(参考)
    1. 関連する政策・ガイドライン
    2. モデル契約書案のタームシート(例)
      1. データ・ノウハウ等提供契約
      2. AI 研究開発委託モデル契約

この目次を見れば分かると思いますが、今まではほとんど関係ないと思われていたAIと農業関係者との関わりから始まり、各種のモデル契約書まで、幅広い情報が記載されています。

内容的には、既に公表されている経済産業省が取りまとめた「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を参照しながら、この経済産業省のガイドラインとの違いについても記載されています。

AI・データの利用に関する契約に関して全体像を把握するためには、経済産業省がまとめた「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」も読んだ方が良いかもしれません。

そして、この農林水産省がまとめたガイドラインの最も特徴的な部分は、「農業分野におけるAIに関するモデル契約書」が提示されていることだと思います。

上述した経済産業省がまとめた「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」にも、AIに関するモデル契約書が提示されています。

しかし、そのモデル契約書は産業全般に利用できるものを想定しており、農業分野にそのまま利用できない部分もあります。

そこで、その部分の違いをキチンと指摘しています。

例えば、P116には、「農業分野の場合には、サービス内容により入力データは異なるが、農業関係者等の 「暗黙知」を内包することもある。この暗黙知については、「農業データについてい えば、特に非構造化データと言われるデータ単体(例えば、特定の農業関係者等のウ ェアラブル端末から発せられる視認データなど、「暗黙知」とされるノウハウの一部 に過ぎないデータ)で、何らそのデータの分析が行われておらず、「形式知」化され ていないもの)」76のような性格を有するものもある。」と記載されており、経済産業省が提示した「AIに関するモデル契約書」とは違う部分を明確化しています。

このように、このガイドラインでは、農業分野に特化した契約に関する考え方やモデル契約書が記載されています。

これらのモデル契約書は、農業分野における基本的な契約に関する考え方を示すものとなる可能性があります。

したがって、これから農業分野でAI開発に関与しようとする企業や農業従事者等は、是非このガイドラインをご覧になってください。

弊所では、農業分野における共同開発契約、データの利用許諾を含めた契約交渉およびライセンス契約書のご相談も承っております。
これらに関して何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

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