営業秘密管理指針が改訂されました(2019)
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2019年1月23日に、経済産業省より改訂された営業秘密管理指針が公表されましたので、今回はそれについて書きます。
改訂された営業秘密管理指針はこちら
今回の改定は、ビッグデータ、AIの活用が推進する第四次産業革命を背景として情報活用形態が多様化する状況を踏まえたものとなっています。
なお、この営業秘密管理指針は、不正競争防止法によって保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示すものとなっており、包括的な対策については、「秘密情報の保護ハンドブック」に記載されていますので、注意してください。
さて、今回の改訂では、主に次の箇所が追加・修正等されています。
- 秘密管理性
- 従業員に対して、秘密保持契約(あるいは誓約書)などによって守 秘義務を課すことが秘密管理性を担保する有効な措置であると考え られることから、例示に追加
- 営業秘密を外部のクラウドで管理する場合、秘密として管理されて いれば秘密管理性は失われない旨追記し、例を記載
- 複数企業で共同研究開発を行うなど、自社の営業秘密を複数の他の 企業に開示する場合、当該複数企業を当事者とする秘密保持契約を 結ぶことが有効である旨記載
- 有用性について
- 有用性が認められるネガティブインフォメーションの例に、AIプログラム開発で使用する製品の欠陥情報を追加
- 非公知性について
- 公知情報の組み合わせに関する表現について、非公知性の要件の説 明の中で「有用性」との文言が用いられている箇所について、要件 の混同を避ける趣旨で表現を「価値がある」と修正
- 「公然と知られていない」状態について、裁判例等を踏まえ、入手 可能な商品等から容易に推測・分析されない情報(リバースエンジ ニアリングが容易でない情報)も追加し、関係する裁判例も追加
- 公知情報を組み合わせた AI 技術の開発(学習)用のデータセットについて、その組み合わせの容易性、取得に要する時間や資金等のコスト等を考慮して非公知性が判断される旨を注釈に追記
これらを見ると、まさしく改訂の目的に沿って、ビックデータやAIに関連した事項が追加・修正等されていることが分かると思います。
(関連する最新の裁判例も記載されています。)
ちなみに、個人的には次のような点が重要になるのではないかと思います。
- 従業員や共同研究先との間で秘密保持契約を締結すことが有効な措置であること
- 営業秘密を外部のクラウドで管理する場合、秘密として管理されて いれば秘密管理性は失われないこと
- 複数の情報の総体としての情報については、組み合わせの容易性、取得に要する時間や資金等のコスト等を考慮し、保有者の管理下以外で一般的に入手できるかどうかによって判断されること
詳細については、営業秘密管理指針を参照してください。
今後、ビックデータやAIが普及するにつれて、営業秘密の重要性は増して行くと考えられます。
大量のデータを扱っている方は、この営業秘密管理指針を読んで、社内の営業秘密管理に役立ててください!
弊所では、営業秘密管理に関するご相談も承っております。
営業秘密に関して何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。