音楽教室への著作権料徴収に関する文化庁の裁定
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
平成30(2018)年3月7日に文化庁から、音楽教室への著作権料徴収に関する裁定が公表されましたので、今回はそれについて書きます。
この裁定は、次のような経緯で出されました。
平成29(2017)年6月7日付で、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)から文化庁に対して、いわゆる音楽教室に対する著作権料徴収を定めた使用料規程が届出がありました。
この届出に対して、平成29(2017)年12月21日付けで音楽教育を守る会から著作権等管理事業法に基づく文化庁長官の裁定(著作権料徴収の実施の保留を求める裁定)の申請がありました。
そして、今般この裁定が出されました。
詳細は、この裁定書を読んでいただければとは思いますが、結論としては、
「平成 29 年6月7日付けで一般社団法人日本音楽著作権協会から文化庁長官に届出の あった使用料規程については,音楽教育を守る会が求める実施の保留は行わず,著作権 等管理事業法第 24 条第3項に基づき,本裁定の日をもって実施の日とする。」
ということになりました。
すなわち、「JASRACが音楽教室から著作権料の徴収することを認める」という内容の裁定となっています。
ただし、裁定書と同時にJASRAC宛てに出された文化庁の通知書には、次のような記載があります。
- 本件使用料規程の実施に当たって,音楽教室における演 奏について演奏権が及ぶことを争う音楽教室事業者に対しては,演奏権が及ぶかどうかの争 いがある使用態様につき,司法判断等によって請求権が認められるまでは個別の督促(利用 許諾契約手続の督促・使用料の請求)を行わないこと
- 音楽教室における演奏につい て演奏権が及ぶことを争わない音楽教室事業者に対しても,その使用料の請求を行うに当た っては,本件使用料規程において規定する料率を上限とし,利用者の利用の実態等を踏まえ, 適宜協議を行うなどにより適切な使用料の額とすること
この裁定に対して、音楽教育を守る会からは会長名で会員宛てにメッセージを送付しています。
このメッセージには、「会員の皆様におかれましては、音楽教室での演奏のどの部分に演奏権が及ぶのかとの司法判断が確定していない段階では、利用許諾契約手続や使用料支払いに応じない事が賢明と思われますので慎重に対応くださいますよう願い申し上げます。」と記載されており、あくまで司法判断を待つという姿勢のようです。
現在、音楽教育を守る会とJASRACとの裁判がどのような状況になっているか分かりませんが、この裁判を注視していきたいと思います。
弊所では、著作権に関するご相談も承っております。
著作権に関して何かありましたら、是非弊所にご相談ください。
今日は以上です。