ライセンス契約書を作成する際に役立つ資料27
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログで紹介した「知的財産の利用に関する独占禁止法の指針」(知的財産ガイドライン)の一部が、平成28年1月21日に改正されました。
(独占禁止法は、法律自体が抽象的で分かりにくく、また裁判で争われることが少ないため、裁判例の蓄積もあまりありません。そこで、このような指針(ガイドライン)を多数作成して、公正取引委員会の考え方をある程度明確しています。)
そこで、今回は、その「知的財産の利用に関する独占禁止法の指針」の一部改正について書きます。
『新旧対照表』をご覧いただければ分かりますが、この改正のポイントは、「標準規格必須特許を有する者による差止請求訴訟の提起等に係る独占禁止法上の考え方の明確化」です。
現在、国を挙げて標準化戦略を進めていますが、改正前の知的財産ガイドラインによると、標準規格必須特許を有する者が差し止め請求訴訟を提起した場合に、その多くが独占禁止法違反に認定されてしまう可能性がありました。
そこで、知的財産ガイドラインに、標準規格必須特許を有する者による差止請求訴訟の提起等に係る独占禁止法上の考え方を追加する改正を行ったようです。
今回の改正部分のポイントは、
『FRAND条件でライセンスを受ける意思を有する者に対し,ライセンスを拒絶し,又は差止請求訴訟を提起すること等は,規格を採用した製品の研究開発,生産又は販売を行う者の取引機会を排除し又はその競争機能を低下させる場合がある。
当該行為は,
- 当該製品の市場における競争を実質的に制限する場合には,私的独占に該当(独占禁止法第3条)
- 私的独占に該当しない場合であっても,公正競争阻害性を有するときには,不公正な取引方法に該当(独占禁止法第19条〔一般指定第2項,第14項〕)』
というものです。
ちなみに、「FRAND条件でライセンスを受ける意思を有する者であるか否かは、ライセンス交渉における両当事者の対応状況等に照らして,個別事案に即して判断される」ようです。
この改正部分を読むと当たり前じゃないのか?と思うかもしれません。
しかし、ライセンス交渉では、独占禁止法に基づく条項の削除・改変を求められることもあります。
交渉相手に独占禁止法に抵触する等を言われたときに、即座に対応できるように、今回の改正部分も含めて「知的財産の利用に関する独占禁止法の指針」の内容を理解しておきましょう!
交渉では、その場で即座に判断しなければならいこともあります。
ちなみに、標準規格必須特許か否かでもめた場合には、私も少し係わっている日本知的財産仲裁センターで「センター必須判定」というサービスを使って解決する方法もあります。
ライセンス契約における独占禁止法の取り扱いや、標準規格必須特許について何かありましたら、是非弊所にご相談ください。
今日は以上です。