誰でも無料で学術論文を読めるようにするべきか?
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
今回は、ちょっと趣向を変えて、「人類の英知がつまった学術論文を誰でも無料で見れるようにすべきか?」ということについて書きたいと思います。
私も学生時代に大学付属の図書館や国立国会図書館に行き、論文を読んだり、コピーしていました。この時は、コピー代だけを支払えば論文のコピーを入手できたので、論文の値段なんて気にしていませんでした。
実際は、大学や国会図書館が高額の論文購読料を支払っていたようですね!
(最近はwebでも見ることができるようになって、購読料も跳ね上がっていると聞いています。)
ここで、もし学生だったら、「科学の知見は人類共通の知識なのだから、どんな人でもみれるように、購読料をできるだけ低く、できれば無料にすべきだ!」なんて思っていたかもしれません。
実際に、4700万件の学術論文をタダで読めるようにしている海賊サイトがあるようです(著作権を侵害しているサイトなのでサイト名は記載しません)。
そのサイトでは、科学的・教育的な資源に対して、知的財産や著作権法の解消(cancellation)を主張しているようです。
一見、この主張は正しいようにも思えます。
しかし、よく考えてみてください。
良いものにはそれなりのコストがかかっているのです(当たり前ですね)。
論文を書くのは、論文を提出する学者達なので、費用はかかっていないように思えますが、一流の学術誌には一流の学者による査読※があります。
査読には、学者の選定やその手配等、様々なコストがかかります(査読自体は名誉しか与えられず、査読料は無料ということもあるようです)。そこで、このコストをどこかで回収する必要があり、多くの学術雑誌は高額の購読料という形で回収しているのです。
もちろん、査読等にコストがかかるなら、査読自体をやめればいいという考えもあるかと思います。実際、査読を行わない学術雑誌もあるようですが。。
ただ、査読を行わない雑誌に掲載される論文の質は相当低いものにならざるを得ないと思います(誰が書いた論文でも掲載できるなら、極端な例を言えば小学生が描いた論文でも掲載されてしまいます)。
そうすると、素晴らしい論文も、多量の質の低い論文の中に紛れてしまいます。
そして、その素晴らしい論文を真に必要とする人が発見できなくなってしまい、結果として科学の発展を阻害することになってしまうかもしれません。
現時点における私個人の考えとしては、論文を見るには相当のコストがかかるのは当然であると考えています。
ですので、上記の海賊サイトで学術論文をダウンロードするのではなく、正規の手続きを経て学術論文を入手するようにしてください。それが、結局は科学の発展に資するものだと思います(この考え方は知的財産を保護することが経済の発展に寄与することと同じですね!)。
なお、上記の海賊サイトは、日本の著作権法では著作権を侵害(著作権第23条違反)していることになると思われます。
ちなみに、使用目的が「調査研究の用に供するため」であれば、国立国会図書館の遠隔複写サービスを使うのもありだと思います(著作権法31条で認められています)。
(私も論文を書くために、利用者登録して使っています)
費用も低いですし、論文等を作成する際には是非利用してみてください!
今日は以上です。
※査読とは、論文が雑誌に掲載される前に、その論文と同一の学術領域の専門家によるチェック(評価を受けること)をいい、一般にそのチェックを通過しないと論文に掲載されません。