こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2023年3月31日に、経済産業省から「ファッションローガイドブック2023」が公表されましたので、今回はこれについて書きます。
「ファッションローガイドブック2023」はこちら
このガイドブックは、ファッションブランドやデザイナー、若手クリエイター、ファッションを志す学生等がビジネスを展開するにあたって、ファッションローの観点からぜひ知っておいてほしい内容を実用的なチェックリストにしてまとめたものです。
さて、このガイドブックの内容ですが、次のような目次になっています。
- ブランドを立ち上げたらまずやるべきこと
- ブランド名を商標出願・登録しよう
- ブランド名を商標出願・登録しようブランド名を決めるときは商標登録しやすいかどうかを意識しよう
- Basic「商標権とは?」
- ブランド名を決める前に他のブランドに商標登録されていないことを確認しよう
- 商標を使用するアイテムを決めよう
- できるだけ早めに出願しよう
コラム「商標権を侵害されたら?」 - 「まずは日本」、でも中国も早く出願しよう
コラム「『Rマーク』、『TMマーク』とは?」
コラム「プラットフォーマーなどによる保護プログラム」
商標出願をお考えの方への相談窓口の御紹介
- ファッションデザインの権利について知っておくべきこと
- 自分たちのデザインを守ろう
- 日本国内で最初に販売された日から3年間はそっくりのコピーから守られることを知っておこう
コラム「ファッションデザインと著作権」 - 意匠登録を検討しよう
Basic「意匠権とは?」
コラム「新規性喪失の例外」 - ブランドの顔となるデザインなら、積極的に広告宣伝し、デザインのブランド化に挑戦してみよう
コラム「模倣品へはどう対応する?」
コラム「ファッションデザインと意匠法の相性」
知的財産に関するトラブルの相談窓口の御紹介
- 日本国内で最初に販売された日から3年間はそっくりのコピーから守られることを知っておこう
- 他社のデザインの権利等に触れないようにしよう
- 有名なデザインには近づかないようにしよう
- 有名でなくても、少なくとも3年はそっくりのコピーをしないようにしよう
- コラム「どのくらい似ていると『模倣』になる?」
- 意匠登録されているデザインと似たデザインはやめよう
- イラストや絵は安易にコピーしないようにしよう
コラム「警告書が届いたらどうすればいい?」
コラム「パロディやオマージュとファッション」
- 異なる文化のデザインやモチーフ、スタイル、名前を取り入れる際は慎重に
- 「文化の盗用」の問題についてよく知ろう
コラム「なぜ『文化の盗用』が問題となるのか」 - 異なる文化のデザインなどの歴史的な背景や社会的な意味をしっかりとリサーチしよう
- 過去の事例を調べ、自分たちのケースと比較してみよう
- 異文化特有のデザインなどを取り入れるときは、その文化への敬意を行動で示そう
- 元の文化を担う人々との協業・共創の可能性も検討しよう
- 自分たちの思いや取組をストーリーとして説明できるように準備しよう
- 公表前になるべく多様なバックグラウンドの関係者の視点でチェックしよう
コラム「社会規範の変化と消費者の期待の高まり」
コラム「『お墨付き』を得る難しさ」
- 「文化の盗用」の問題についてよく知ろう
- リメイクやアップサイクルについて知っておくべきこと
- リメイク品・アップサイクル品を販売する場合は元の商品の権利を侵害しないように気を付けよう
- タグやマークなど、元のブランドが分かるものは外そう
- イラストや生地のプリントなどの著作権を侵害しないように注意しよう
- 新たな品質表示タグなどを付けよう
- 自分たちのデザインを守ろう
- プロモーション・広報を外部クリエイター等に依頼する際に気を付けること
- 外部クリエイターに仕事を依頼する際の注意点は?
- 信頼できる人や会社と契約をしよう
Basic「契約とは?」 - しっかり契約書を作ろう
- 契約書の内容は分かりやすく明確に
Basic「著作権とは?」
コラム「著作権その他の権利について定めておこう」 - クリエイターへのリスペクトを常に忘れず、合理的な条件にしよう
- 締結した契約はちゃんと守ろう
- 信頼できる人や会社と契約をしよう
- ファッションショー、展示会を開催する際の注意点は?
- モデルやスタイリスト等の外部クリエイターとしっかり契約を締結しよう
Basic「パブリシティ権とは?」
コラム「モデルのウェルビーイング」 - 音源や写真素材等の権利処理を忘れずに
- 来場者やメディアに守ってもらいたいルールがある場合はしっかり告知しよう
- モデルやスタイリスト等の外部クリエイターとしっかり契約を締結しよう
- プロモーション用ビジュアルやショー映像等を制作するときのポイント
- 第三者の著作権などの権利を侵害しないようにしよう
Basic「肖像権とは?」 - 第三者から利用許諾を得る場合は許諾の範囲(利用態様、期間、地域など)を明確にしておこう
- 完成コンテンツの著作権は自社でしっかり管理しよう
コラム「権利制限規定」
- 第三者の著作権などの権利を侵害しないようにしよう
- 意図せず差別的な表現をしてしまわないために
- どのような場合に差別的・侮辱的表現として問題となるかを理解することから始めよう
- 特定のバックグラウンド(人種・ジェンダー・年齢・体型・障害など)を差別・侮辱していると受け止められやすい表現とならないように注意しよう
- ショーや撮影でのモデルのバックグラウンドの偏りをなるべく少なくすることも意識しよう
- 社会的に弱い立場の人々への配慮に欠けた広告表現に注意しよう
- 社会規範の変化や国際社会の動向にアンテナを張り、意識的に認識をアップデートし続けよう
- 公表前になるべく多様なバックグラウンドからの視点でチェックしよう
- プロモーション内容について社会的責任を負うのはブランドであることを意識しよう
コラム「ステレオタイプを固定化する広告表現」
- インフルエンサーマーケティングで気を付けるべきポイントは?
- ステルスマーケティングへの法規制をめぐる日本と世界の動向をよく知ろう
- ブランドとインフルエンサーとの関係について消費者に潔く、はっきりと伝えよう
- 「お金のやり取りがなければOK」、「阿吽の呼吸ならセーフ」は通用しないことを認識しよう
- インフルエンサーへの依頼の条件を具体的に書面で決めておこう
- 模倣品をデザインしたり買い付けないよう注意しよう
- 景品表示法や薬機法等のルールについてインフルエンサーに伝えよう
コラム「それでも炎上してしまったときはどうすればいい?」
- 外部クリエイターに仕事を依頼する際の注意点は?
- 生産・流通について知っておくべきこと
- 卸先や顧客に商品を販売したい!売買契約の注意点は?
- “よくある契約”だからこそ契約書を作成しよう
コラム「交渉段階での情報の開示に気を付けよう」 - 重要な条件の内容(商品の内容や数量、納入、代金など)を明確にしておこう
- 有利な条件になるように交渉しよう
- 独占禁止法などのルールに従おう
コラム「最適な取引形態を選ぼう」
- “よくある契約”だからこそ契約書を作成しよう
- 工場との取引で気を付けるべきポイント
- 製造委託契約書(OEM契約書)を作っておこう
- 仕様や納期などの重要な条件について明確に決めておこう
- サンプルなどの横流しを禁止することも忘れずに
- 海外工場の場合は特に納期や品質などの条件を具体的に
- 環境・人権に配慮した取引先を選ぼう
- 下請法のルールを守ろう
Basic「下請法とは?」
- ブランドのライセンスビジネスの注意点は?
- ライセンス契約書を作ろう
- ライセンスの対象や範囲を明らかにしておこう
- 独占か非独占かを決めておこう
- ライセンスの対価の条件を具体的に合意しておこう
- デザインなどの権利の帰属や承認プロセスなどの条件も詳細に決めておこう
- ECサイトを立ち上げるために必要なこと
- 「利用規約」、「特定商取引法に基づく表記」、「プライバシーポリシー」の3点セットを準備しよう
- 「同意する」チェックボックス/ボタンは同意の対象を特定して分かりやすく表示しよう
- 返品特約は分かりやすく表示しよう
- 注文確定画面(最終確認画面)の表示はガイドラインに沿って
- 他社のプラットフォーム/サービスを利用する場合、利用規約などの条件をよく確認しよう
コラム「『ユーザーに対して一切責任を負わない』といった規定やユーザーの利益を一方的に害する規定について」
- 卸先や顧客に商品を販売したい!売買契約の注意点は?
- サステナビリティについて知っておくべきこと
- サステナブルなブランドを目指すには
- ファッションを取り巻く現状を知り、意識を高めよう
- 環境・人権に配慮した取引先を選ぼう
- 素材や原材料の供給元を把握しておこう
- トレーサビリティと透明性を確保しよう
- リサイクル・アップサイクル・リユースを視野に入れたシステムをつくろう
- 適正な労働環境を整備しよう
- 「グリーンウォッシュ」に気を付けよう
- 「グリーンウォッシュ」をめぐる日本と世界の動向をよく知ろう
- 環境保全への配慮や効果を消費者にアピールする場合には、必ず実証データの裏付けを取り、明確かつ分かりやすい表現で、誇張せずに正確に伝えよう
- あいまいに「サステナブル」、「環境にやさしい」とだけアピールすることはやめよう
- 環境に配慮した原材料や素材を強調する場合には、その使用割合を明示しよう
- 「カーボンニュートラル」、「生分解性」、「リサイクル可能」などの環境への配慮を示す言葉についても各国でルールがあることを知り、使用する際は慎重に進めよう
コラム「グリーンウォッシュ規制をめぐる最近の主な動向」
コラム「規制当局の取締りや訴訟の動向(主にファッション関係)」
- サステナブルなブランドを目指すには
- 海外でのビジネスを検討する際に知っておくべきこと
- 海外に進出する際、ブランド名はどう守る?
- どの国で商標登録するかを決めよう
- 国際商標出願(「マドプロ出願」)について知っておこう
海外での商標出願などに関する相談窓口・支援策の御紹介
- 海外においてブランドのデザインを模倣された、どうすればいい?
- 日本法で対応できるか確認しよう
- 税関の輸入差止めを使ってみよう
- 日本法での対応が難しい場合は外国法での対応を検討しよう
海外での模倣品対策に関する相談窓口・支援策の御紹介
- 海外においてデザインを模倣されないようにするにはどうすればいい?
- どこの国で模倣される可能性があるかを検討しよう
- 重要なデザインは海外での意匠登録も検討しよう
- 取引先との契約の中に必要な規定(横流しの禁止、秘密保持など)を入れておこう
- 事実を確認の上、ウェブサイトでの注意喚起も検討しよう
コラム「中国における模倣品対策について」
- 海外企業との契約ではどこに気を付ければいい?
- 信用できる取引先かチェックしよう
- 必ず契約書を作成しよう
- 契約条件は全て契約書の中に書き切ろう
- 契約交渉をしよう
- 契約書の言語を決定しよう
- 紛争の解決地・解決方法を決定しよう
- どこの国の法律を適用するか決定しよう
コラム「特にこんな規定に注意」
コラム「荷為替手形?信用状?」
- 日本から越境ECを始めるときに気を付けるポイントは?
- どの言語・通貨で商品・サービスを提供するか決定しよう
- 紛争の解決地・解決方法を利用規約で定めておこう
- どこの国の法律を適用するか決定しよう
- サービスを提供する国の消費者保護法・個人情報保護法に気を付けよう
コラム「FortniteとCOPPA」 - 税金(EUのVAT、アメリカの売上税など)に気を付けよう
- 第三者の権利を侵害しないよう注意しよう
- 他社のプラットフォーム/サービスを利用する場合、利用規約などの条件をよく確認しよう
- 海外に進出/海外と取引する際、サステナブルの観点から気を付けることは?
- サステナビリティに関連する海外の法律やルールを知ろう
- サステナビリティに関する条項やポリシーを確認しよう
- 自社のコミットメントを策定し、取組を報告・公表しよう
- 国際認証の取得を検討しよう
海外展開をお考えの方への相談窓口・支援策の御紹介
- 海外に進出する際、ブランド名はどう守る?
- デジタルファッション領域にチャレンジするときに知っておくべきこと
- デジタルファッションを制作・販売する際、どこに気を付ければいい?
- 誰かが先に商標を出願・登録していないかチェックしよう
- キャラクターのイラストなど第三者がつくった素材を利用するときは、デジタルファッションへの利用を許諾してもらおう
- デジタルファッションを出品する際は、契約・利用規約等に注意しよう
コラム「ライセンスの対価について」
コラム「自分の商品を無断で真似したNFT等が販売されていたら?」
- ノベルティとしてデジタルファッションを無料配布する際に気を付けるべきポイントは?
- デジタルファッションについて商標調査・商標登録出願を検討しよう
- 景品表示法上の景品規制(景品の限度額)にも注意を
コラム「購入チケット等としてのNFTの配布」
- バーチャル試着、メタバース上の展示会・ショッピングではどこに注意すればいい?
- 商標調査・商標登録出願を検討しよう
- 意匠調査・意匠登録出願を検討しよう
- イラストなど第三者がつくった素材を利用するときは、権利者と許諾契約を締結しよう
- デジタルファッションを制作・販売する際、どこに気を付ければいい?
この目次を見れば分かると思いますが、このガイドブックは、法律に関する情報だけでなく、マーケティング的な情報まで解説されています。
このような書籍(ガイドブック)は、ほとんど市販されていないと思いますので、大変貴重な資料だと思います。
例えば、「リメイク品・アップサイクル品を販売する場合は元の商品の権利を侵害しないように気を付けよう」の項目には、次のように記載されています。
『中古品に手を加えずにそのまま販売する場合には、権利侵害の問題はありませ
ん。
自分が使用するために行う場合や、学校での練習のためのリメイク行為自体は問
題ないですが、それを販売する場合には商標権等の侵害リスクがあるため注意し
ましょう。』
すなわち、有名ブランドのロゴ等が表示されている生地等を使って別のものを作製し、それを販売すると、商標権を侵害してしまう可能性があるということです。
この点は非常に重要です。ハンドメイド商品なので問題ないと思っている人もいますが、場合によっては商標権侵害になってしまうことに注意しましょう。
このように、具体的な事項について解説されており、実務的に非常に役立つ情報がたくさん掲載されています。
ファッションに関係することをされている方は、是非目を通してみてください!
きっと役立つと思います。
弊所では、ファッションローに関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。