こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2022年12月21日に、「みどりの品種育成方針」が公表されましたので、今回はこれについて書きます。
「みどりの品種育成方針」はこちら
この方針は、「みどりの食料システム戦略」の目標達成に資する品種育成とその迅速化を図るスマート育種基盤の構築に向け、その手順や到達目標、同基盤の活用を核とした育種の方向性を示すことを目的として策定されました。
さて、この方針の内容ですが、次のような目次となっています。
- 趣旨
- 作物育種の現状と課題
- 世界における育種産業、市場の動向と品種育成、育種基盤の現状
- 我が国における作物育種の技術力と課題
- 品種開発力強化に関する目標
- みどりの食料システム戦略実現に資する主要な品種育成目標
- CO2ゼロエミッション化に資する品種育成
- 化学農薬の使用量低減に資する品種育成
- 化学肥料の使用量低減に資する品種育成
- 気候変動対応に資する品種育成
- 食料安全保障に資する品種育成
- みどりの食料システム戦略実現に資する主要な品種育成目標
- スマート育種基盤充実・強化の目標および手順
- スマート育種基盤の整備に関する基本的考え方
- スマート育種基盤により提供が期待される技術
- 有用な形質を持つ遺伝資源の整備と育種素材化
- 交配シミュレーションによる最適な交配親の予測技術
- 育種ビッグデータを利用した高精度な形質予測が可能な育種AIの高度化
- 形質評価を自動化する高速フェノタイピング技術の開発
- 多品目へスマート育種を展開する作物横断的な育種情報の利用技術
- 品種開発力を強化するための人材の育成と知的財産の保護・活用方策
- スマート育種基盤を活用した人材の育成
- 品種や基盤技術等に関する知的財産の保護・活用方策
- 別紙
詳細は、この方針をご覧になっていただければと思いますが、個人的には、5-2の「品種や基盤技術等に関する知的財産の保護・活用方策」が気になります。
この方針では、次のような事項について記載されています。
- 令和2年改正種苗法により、登録品種については海外への持出しや指定産地外での栽培を制限できるようになったほか、旧種苗法下で育成者権が及ばなかったいわゆる自家増殖についても許諾管理を行うことができるようになったことから、これらの制度も最大限活用する。
- 知的財産の活用にあたっては、公的資金を活用して得られた研究成果についての社会実装を加速化していくため、民間企業等に独占的に実施させること等も含めた効果的な実施許諾の在り方を検討する。
- データの利活用にあたっては、新たな研究成果やイノベーションを生み出す源として、データを適切に管理・共有することが重要であり、スマート育種基盤で開発する技術や取得するビッグデータについても、公開すべきデータと公開適用対象外にすべきデータを明確に峻別した上で、育種AI の高度化研究に向けて収集・解析された豊富なデータを組み込んで拡充を図る
- 研究データの取扱いにあたっては、農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインなどを参考に、迅速かつ適切な利活用を行うとともに、農林漁業者からデータの提供を受ける場合は、提供データの取扱いについて合意を行うことに留意する必要がある
このように、農林水産省は、農業分野においても知的財産による保護および活用が重要であることを明確化しています。
したがって、今後は、農業分野においても、工業分野等と同様に、知的財産戦略が重要な地位を占めることになりそうです。
農業分野でも、育成者権に加えて、特許権や商標権などの知財ミックスの活用が求められるのではないでしょうか?
弊所では、農業分野における知的財産の活用、知的財産戦略の策定等のご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。