こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログに、地理的表示保護制度のメリットの1つとして、「行政が不正な地理的表示を取り締まってくれる」ことを書きましたが、これがちゃんと機能していることが分かりましたので、今回はこれについて書きます。
農林水産省のプレスリリースによると、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律に基づく措置命令が出されたようです。
農林水産省のプレスリリースはこちら
このプレスリリースによると、有限会社Aが運営する飲食店において、客に提供する料理に但馬牛を使用していないにもかかわらず、そのメニュー、広告等に地理的表示である「但馬牛」およびこれに類似する「但馬和牛」等と不正に表示していたことが確認されました。
そこで、農林水産省は、有限会社Aに対し、地理的表示法第5条の規定に基づき、地理的表示の除去・抹消、原因の究明・分析の徹底、再発防止策の実施等について措置を命じたそうです。
ちなみに、措置の内容は次のものになります。
- 経営のために使用している全ての広告、価格表及び取引書類(以下「広告等」という。)において、直ちに表示の点検を行い、地理的表示法第3条第2項に違反する表示がある場合は当該表示を除去し、又は抹消すること。
- 経営のために使用している全ての広告等について、不適正な表示を行った主たる原因として、正しい表示を行うという意識及び地理的表示保護制度に対する認識が欠如していたと考えられることから、これらを含めた原因の究明・分析を徹底すること。
- 2の結果を踏まえ、全役員及び全従業員に対する地理的表示保護制度についての啓発、その遵守の徹底その他の適切な再発防止対策を講じること。あわせて、その再発防止対策を全役員及び全従業員に周知徹底すること。
- これらにより、今後、地理的表示保護制度に違反する不適切な表示は行わないこと。
- 上記1から3までに講じた措置について報告書をとりまとめ、令和5年1月20日までに農林水産大臣宛てに提出すること。
地理的表示と似た制度として地域団体商標制度があります。
しかし、地域団体商標では、地域団体商標権に基づく警告や、裁判で勝訴しないと差止や損害賠償を請求することができません。
一方、地理的表示では、行政庁である農林水産省が上述したように取締りを行ってくれます。
費用もかからず、極めて有効な取締り方法だと思います。
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今日は以上です。