こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2022年6月30日に、「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」の改訂版が公表されましたので、今回はそれについて書きます。
「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き(第2版)」はこちら
幅広い業種の企業がSEPを巡るライセンス交渉に関わりを持つようになっているため、交渉に慣れていない企業が安心して交渉に臨めるよう、適切な情報の提供が求められるようになっています。
そこで、この手引きは、交渉の進め方やロイヤルティの算定方法などについて、特許権者と実施者との間の利益のバランスを図る上で考慮されるべき要素を示すことは、有益であるということから作成されました。
さて、この手引きの内容ですが、次のような目次となっています。
- 本手引きの目的
- 標準必須特許を巡る課題と背景
- 本手引きの位置づけ
- SEPを巡る近時の動向と改訂に至る経緯
- 透明性の高い手引きに向けた取組
- ライセンス交渉の進め方
- 誠実性
- 特許権者がライセンス交渉の申込みをする段階
- 実施者がライセンスを受ける意思を表明するまでの段階
- 特許権者がFRAND条件を具体的に提示する段階
- 実施者がFRAND条件の具体的な対策を提示する段階
- 特許権者による対案の拒否と裁判・ADRによる解決
- 効率性
- 交渉期間の通知
- サプライチェーンにおける交渉の主体
- 機密情報の保護
- 交渉の対象とする特許の選択
- ライセンス契約の地理的範囲
- プールライセンス
- SEPの透明性向上
- ロイヤルティの算定方法
- 合理的なロイヤルティ
- 基本的な考え方
- ロイヤルティベース(算定の基礎)
- ロイヤルティレート(料率)
- 同じ特許権者が保有する比較的可能なライセンス
- 第三者が保有する比較的可能なライセンス
- パテントプール
- 料率を決定するその他の考慮要素
- ロイヤルティ料率を受け入れたライセンシーの数
- 特許の必要性・有効性・侵害の該当性
- 個々の特許の価値
- 交渉経緯
- 非差別的なロイヤルティ
- 非差別性の考え方
- 使途が異なる場合のロイヤルティ
- その他
- 定率と定額
- 一括払いとランニング方式
- 過去分と将来分
- ボリューム割引と上限
- 合理的なロイヤルティ
- あとがき
- 第2版あとがき
- 参考資料
- 誠実性
この目次を見てわかると思いますが、この手引きには、ライセンス交渉の各段階において、考慮すべき事項や、それらに対してどのように考えるべきかについての考え方が解説されています。
例えば、「ロイヤルティレート(料率)」の項目には次のような記載があります。
「3.ロイヤルティレート(料率)
(料率の考え方)
適切な料率の算定方法については様々な考え方がありますが、裁判例においてよく用いられる考え方としては、①個々のSEPの価値を独立に評価して料率を算出する考え方(ボトムアップ型)と、②特定の標準に係るSEP全体の貢献が算定の基礎に占める割合を算定し、その後、個々のSEPに割り当てるという考え方(トップダウン型)があります。
2つのアプローチは、相矛盾するものではありません。より信頼性の高い料率を算定するために、両方のアプローチを組み合わせ、それぞれの算出結果を比較することもあります。」
このように、ロイヤルティレートに関する実務的な考え方が解説されています。
ライセンス交渉に関する書籍はあまりないので、この手引きは非常に有用な資料ではないかと思います。
そして、これらの情報は、標準必須特許に関するライセンス交渉だけでなく、一般的なライセンス交渉にも役立つと思います。
この手引きを読んで、活用してください!
弊所では、ライセンス交渉からライセンス契約書に関するご相談も承ります。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。