こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
毎年ブログに取り上げていますが、今年度も2022年6月22日に「独占禁止法に関する相談事例集」の令和3年度版が公表されましたので、今回はこれをご紹介します。
「独占禁止法に関する相談事例集(令和3年度)」はこちら
独占禁止法に関する相談事例集は、公正取引委員会が毎年公表しているもので、今回ご紹介するものものは、令和3年度に受けた相談事例をまとめたものになります。
さて、各事例の詳細は、この事例集をご覧になっていただければと思いますが、今回はこの事例集に収録されている事例のうち、知的財産に関係する次の事例についてご紹介します。
相談事例6 パテントプールの管理運営者による特許権者の特許評価請求件数の上限設定
公正取引委員会は、この相談に関し、次の点について、独占禁止法上問題となるか判断しています。
- 取引条件等に差を設けることを通じて市場における競争(行為者とその競争者との競争 、 差を設けられることによってその事業活動において競争上の影響を受ける者の間における競争)を減殺するおそれがあるかどうか
この点について、公正取引委員会は、
- X協会による権利評価の作業の遅延 によって 、 実施許諾の対価を収受する時期を遅らせることとなる(すなわち 、 特許権者 にとって不利益となる)
- 0ポイント特許は 、 評価対象機種のうちの1機種も実施されていないものであり、業務用機械Aの製造において広く利用される技術というわけではなく、その意味において、特許としての評価は、複数の機種で実施されている評価対象特許と比べると、相対的に低いとみられる。
と認定し、「本件取組を実施したとしても、そのこと自体は不合理な差別であるとはいえない」と評価しています。
また、公正取引委員会は、
- 本件取組によって 按分結果に応じた扱いを行うこととしても、全ての特許権者に対して按分結果に応じて平等に適用されるものである
- 0ポイント特許の保有者は、特定の特許権者に偏っているわけではなく、会員が精査・選別して評価請求を行えば 、 従前認められていたのと同様の評価ポイントを獲得することが可能であると考えられ、本件取組による各特許権者の権利シェアの変動幅は僅少である
- 年間20件の最低保証件数が設けられており、評価請求できる件数が少ない会員に対して過度の制約とならないように配慮がなされている
と認定し、「本件取組によって、本件パテントプールにおけるライセンス料の分配について、不当に、特定の特許権者に有利な又は不利な状況が生じるとはいえない」と評価しています。
さらに、公正取引委員会は、
- 本件取組は、特許権者による評価請求の件数に上限を設けるものにすぎず、0ポイント特許の保有者による本件パテントプールへの参加が妨げられることはない
- X協会は本件パテントプールにプールされている特許を一括してサブライセンスしているため、特許に係る取引の機会が減少することもなく、本件取組により、業務用機械Aの製造に係る技術の市場における特許権者間の競争に影響が生じることはない
と認定し、「本件取組は 、 本件パテントプールにプールされている特許の内容及びX協会が当該特許をサブライセンスする際の条件に変更を生じさせるものではなく、当該特許に係る技術を用いた業務用機械Aの製造販売市場におけるライセンシーの間の競争にも影響は生じない」と評価しています。
そして、本件取組の結論としては、「本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない」とされています。
この事例は、パテントプールを運営する上で役立つ情報だと思います。
弊所では、パテントプールに関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。