こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2022年3月31日に、公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)から「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン」が公表されていますので、今回はそれについて書きます。
「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン」はこちら
「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン(ダイジェスト版)」はこちら
さて、このガイドラインですが、農業分野における栽培・飼養技術やその他のノウハウ等の知的財産を営業秘密として保護するに当たり、農業分野の特殊性を踏まえた技術・ノウハウ等の管理・取扱方法や留意点等について、農業の現場で参照されやすいようにわかりやすく示すことを目的として作成されました。
以前のブログに書いたように、農業はノウハウのカタマリだと思います。
そして、そのようなノウハウを保護する方法としては、不正競争防止法による保護があります。そこで、このガイドラインでは、農業分野のノウハウ(営業秘密)を守るための方法が具体的に説明されています。
ちなみに、農業分野のノウハウとして、次のようなものが挙げられています。
分野 | 工程 | 保護され得る技術・ノウハウ等 |
---|---|---|
耕種分野 | 種苗の生産・増殖 | 種苗の保管・催芽・育苗・種苗ほ場管理・接ぎ木・挿し木の方法、F1品種の親系統に関する情報、育種母本に関する情報 |
土作り・施肥 | 堆肥の生産技術、肥料の配合割合、施肥時期の判断要素、施肥方法、過去に蓄積した施肥と生育の相関データ | |
播種・植付け | 播種時期の判断要素、播種方法、多品種の組合せ方法 | |
防除 | 防除時期の判断要素、薬剤散布方法、過去に蓄積した防除と生育の相関データ | |
物理的な草樹勢・収穫物品質管理 | 摘葉、摘心、摘芽、断根、水分管理、誘引、整枝、剪定、摘花・摘果・摘粒・摘房に係る時期とその方法 | |
収穫・調整 | 収穫時期の判断要素、収穫方法、水分管理・予冷等の調整方法 | |
その他栽培管理全般 | かん水方法、環境制御方法(例:施設栽培等における水分量・二酸化炭素量 ・日光量・夜間照明量・養液分量の制御)、作業員の配置計画・労務管理、人工授粉、ホルモン剤処理、作柄の見回り、過去に蓄積した栽培管理と生育の相関データ |
|
選別・包装 | 選別方法、選果ラインの設計、パッキング方法、充填方法 | |
経営管理 | 財務情報、顧客情報、販売実績 | |
畜産分野 | 繁殖 | 家畜人工授精用精液の採取・処理・注入技術、家畜受精卵の採取・処理・移植技術、血統による交配の組合せ |
家畜・家きんの導入 | 健康状態の推察方法、過去に蓄積した導入家畜・家きんの品種・血統と飼養成績の相関データ | |
飼料生産・調整・給与 | 飼料の生産・調整技術、飼料の配合割合、飼料の給与量と種類の切り替え時期の判断要素、飼料給与方法、過去に蓄積した飼料(給与量、種類)と飼養成績の相関データ | |
衛生管理・疾病対策 | 農場の衛生管理プログラム(消毒薬の選択、消毒薬の濃度・量、品質管理の手法等)、過去に蓄積した衛生管理・疾病対策と飼養成績の相関データ、鶏卵の衛生管理プログラム(GPセンター生成管理マニュアル等)、ワクチン・プログラム | |
その他飼料管理全般 | 給水方法、飼養環境制御方法(例:畜舎・鶏舎内の温度・湿度・風量・照明量)、作業員の配置計画、労務管理、家畜・家きん等の見回り、過去に蓄積した飼養管理と飼養成績の相関データ、敷料の材料・床の材質 | |
排せつ物処理 | 堆肥化・汚水処理・エネルギー化の方法 | |
出荷 | 出荷時期の判断要素、出荷前の管理方法、鶏卵のトレース情報の把握・管理方法 | |
経営管理 | 財務情報、顧客情報、販売実績 |
これらの情報を不正競争防止法で保護しようと考えている方は、是非このガイドラインをご覧になってください!
例えば、「屋外に存在するF1品種の親系統の保護」として、「会社内ではほ場を区画に分けた上で、各区画でどのような品種が栽培されているかわからないよう、区画A、区画Bなどと記号で呼んでいるケースもある」と具体的な保護方法も例示されています。
この他に、次のような秘密保持契約書のサンプルも掲載されています。
このように、農業分野において、不正競争防止法によりノウハウ(営業秘密)を保護したいと考えている方は、是非このガイドラインを活用してください。
弊所では、農業分野におけるノウハウ管理に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所にぜひご相談ください。
今日は以上です。