こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
特許法には、医薬品等一部の分野では、安全性の確保等を目的とする法律の規定によって特許発明を実施することができず、特許権の存続期間が侵食されるため、その期間を回復する制度として、特許権の存続期間の延長制度があります(特許法67条4項)。
今般、第208回通常国会において成立した「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正薬機法)の施行に伴い、特許権の存続期間の延長登録制度に関して、延長登録の理由となる処分を定める規定が新たに制定されましたので、今回はそれについて書きます。
特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分を定める規定に関するプレスリリースはこちら
改正薬機法により、緊急時において、安全性の確認を前提に医薬品等の有効性が推定されたときに、条件及び期限付きの承認を与える迅速な薬事承認の仕組み(以下「緊急承認制度」という。)が新たに設けられました。
緊急承認制度では、条件及び期限付きの緊急承認を得たのち、所定の期間内に改めて承認申請を行うこととなっています。
そこで、この緊急承認制度が適用された場合の、特許権の存続期間の延長登録制度の取扱いが定められました。
具体的には、次の図に示されるように、緊急承認制度により、緊急承認(下記図中の①)と緊急承認を受けた後に当該承認の期限内に改めて行う申請に基づく承認(下記図中の②)を受ける場合には、緊急承認を特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分とし、改めて行う申請に基づく承認は、特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分とならないことになりました。
これは、緊急承認(下記図中の①)は、薬機法上の「製造販売の承認」であり、これにより特許発明の実施が可能となることから、緊急承認は特許法上の特許発明の実施をするために受けることが必要であった処分に相当という理由によるものです。
2020年から蔓延したコロナウィルスの影響は、特許権の存続期間の延長制度まで及んできたことの証拠かもしれません。
特許権の存続期間の延長制度を利用する企業は少ないかもしれませんが、特許権の存続期間を延長できる唯一の制度です。利用できる場合には積極的に利用してください!
弊所では、特許権の存続期間の延長制度のご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。