日本でもマルチマルチクレームが禁止されます!
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
令和4年2月25日の特許庁のプレスリリースによると、米国や中国で原則禁止されているマルチマルチクレーム※に関し、日本においても令和4年4月1日以降の特許出願(実用新案登録出願を含む)から禁止されることになりましたので、今回はそれについて書きます。
マルチマルチクレームに関する特許庁のプレスリリースはこちら
これは、特許実務においては非常に重要な改正になりますので、是非ご確認ください。
この改正は、国際調和並びに審査処理負担及び第三者の監視負担の軽減の観点から行われたと説明されています。
特許実務的には、マルチマルチクレームを利用することによって、少数の請求項で、様々なクレームを包含することができるので、よく用いられてきました。
ただ、最近は、PCT出願を介して、米国や中国に国内移行する案件も増えてきており、各国移行の際に、その国の実務に合わせて請求項を再構成する必要がありました。その結果、コスト高になっていた点は無視できないかもしれません。
令和4年4月1日以降は、PCT出願に記載した請求項をそのまま各国移行するということが増えると思われます。
(現時点(令和4年2月)では、欧州特許出願における請求項の記載には、マルチマルチクレームは禁止されていませんが、欧州特許出願だけ、請求項を書き換えることは少なくなるのではないか思います。)
さて、令和4年4月1日以降、マルチマルチクレームは次のように取り扱われる可能性が高いです(このブログの記載時点では、パブコメ中であり、取り扱いが定まっていません。)
- 施行後にする特許出願にマルチマルチクレームが含まれている場合、第36条第6項第4号(委任省令要件)違反の拒絶理由となる
- マルチマルチクレームおよびこれを引用する請求項については、マルチマルチクレームに係る委任省令要件以外の要件についての審査対象とならない
- 上記委任省令要件違反の拒絶理由通知への応答で、マルチマルチクレームを解消する補正がされ、審査をすることが必要になった結果、通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する場合には、最後の拒絶理由通知となる
- 施行後にする実用新案登録出願にマルチマルチクレームが含まれている場合、実用新案法第6条の2に規定する要件(基礎的要件)を満たさないものとなる
この取扱いを見ると、①マルチマルチクレームが記載されていると、最初の拒絶理由では、第36条第6項第4号違反とされます。②その後マルチマルチクレームの補正を行って再度審査を受け、新規性・進歩性を満たさないと判断されると、最後の拒絶理由が通知される、という取り扱いになるようです。
このような取り扱いは、出願人にとって不利益が大きいので、出願の際に、マルチマルチクレームが記載されていないことを確認しておくことをお勧めいたします。
ちなみに、特許庁は、「マルチマルチクレーム検出ツール」をリリースしています。
「マルチマルチクレーム検出ツール」はこちら
まずは、このツールをダウンロードして利用するのが良いと思います。
(弊所でも早速ダウンロードして利用しています。)
今回の改正は、特許実務では非常に重要なものなので、特許庁のプレスリリースを詳細にご覧になることをお勧めいたします。
弊所では、知的財産に関する最新の状況に応じて対応しております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。
※マルチマルチクレームとは、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項(マルチクレーム)を引用する、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」です。
具体的には、例えば、次の請求項4がマルチマルチクレームになります。
請求項1:○○○を有する情報管理システム。
請求項2:△△△を有する請求項1に記載の情報管理システム。
請求項3:◇◇◇を有する請求項1または2に記載の情報管理システム。
請求項4:■■■を有する請求項1~3の何れか1項に記載の情報管理システム。