「標準化実務入門」が公表されています
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
経済産業省から資料「標準化実務入門」が公表されていますので、今回はそれについて書きます。
「標準化実務入門」はこちら
この資料は、標準化に関する実務にこれから携わる人向けに作成されています。
近年、製品やサービスを普及するための手段として、「標準化」が叫ばれるようになってきました。
ただ、標準化業務に携わった経験を有する人材が少なく、我が国において標準化の妨げになっている可能性があると思われます。
そこで、経済産業省は、標準化の入門書として、この資料を作成したのではないかと思います。
さて、この資料の内容ですが、次のような目次となっています。
- 第1章 標準化概要
- 第1節 標準化・規格の定義と分類
- 標準化とは
- 規格、標準とは
- 第2節 標準化の目的・意義、効用、重要性
- 標準化の目的・意義
- 標準化の効果と限界
- 第3節 標準化を必要とする具体的事例
- 標準化されて生活に困らなくなった例
- 標準化することができず不便を強いられる例
- 第2章 経済活動としての標準化
- 第1節 標準化が必要となる種々の要因について
- 経済のグローバル化による国際標準化の必要性
- WTO/TBT の成立
- 第2節 標準化の経済効果を理解するための基本概念
- ネットワーク外部性
- スイッチング・コストとロックイン効果
- 情報の非対称性
- 第3節 ビジネス主体から見た標準化の効果
- 標準化のビジネス効果
- 標準化のデメリット
- 第4節 デファクト標準とフォーラム標準
- デファクト標準の成立
- デファクト標準獲得からフォーラム標準化へ
- フォーラム標準の本質
- 第5節 デジュール標準の価値と活用
- 企業におけるデジュール標準の価値
- デジュール標準獲得のための活動
- コンセンサス標準活用の基本的考え方
- 第1節 標準化が必要となる種々の要因について
- 第3章 公共財としての標準化
- 第1節 消費者と標準化
- 消費者と標準の関係
- 標準化における消費者政策の在り方に関する提言書
- 高齢者・障害者への配慮に係る標準化の進め方について
- 第2節 規制と標準化
- 強制法規と規格の関係
- わが国における標準化の歴史と強制規格
- 製品規格と安全規格
- 企業にとっての標準化と安全規格
- さいごに
- 第1節 消費者と標準化
- 第4章 適合性評価の基礎
- 第1節 適合性評価とは
- マネジメントシステムの適合性評価
- 規制のおける適合性評価
- 適合性評価のためのルール
- 第2節 国際ルールと主な適合性評価制度
- WTO/TBT 協定と適合性評価制度
- 国際標準化機構/適合性評価委員会(ISO/CASCO)
- 製品認証分野
- マネジメントシステムの認証制度
- 試験所認定制度とは
- 計量標準に関するトレーサビリティ制度
- 第3節 相互承認
- 相互承認とは
- 政府機関間の相互承認
- 認定機関間の相互承認
- 適合性評価機関間の相互承認
- 第4節 計量標準
- 計量標準・標準物質とは
- 計量標準による長さの測定/標準物質による濃度の測定
- 計量標準や標準物質に係る研究開発
- 第1節 適合性評価とは
- 第5章 国標準化機関及び国際標準の制定
- 第1節 ISO
- ISO とは
- ISO の目的
- ISO の会員
- ISO の組織
- 規格の制定
- 国際規格以外のその他の規格類
- ISO 活動への企業の参画
- 第2節 IEC
- IEC とは
- IEC の目的
- IEC の会員
- IEC の組織
- 規格の制定
- 規格開発のフォロー
- IS の見直し
- IS 以外のIEC 出版物であるTS、TR 及びPAS の発行手順
- 第3節 JTC1
- JTC 1 の誕生の経緯と目的
- JTC1 のメンバー
- JTC1 の組織
- 規格開発のプロセス
- 第4節 ITU
- ITU とは
- ITU の目的
- 会員
- ITU の組織
- 規格の制定
- 第1節 ISO
- 第6章 日本の標準制度全般
- 第1節 日本の工業標準の歴史
- 工業標準化政策の始まり
- 戦後の工業標準化政策
- 工業標準化長期計画の策定
- 国際標準化政策の展開
- 第2節 日本の国際標準化戦略
- 世界における日本の国際標準化活動の現状
- 日本の国際標準化活動の取組・課題
- 第3節 我が国の標準化制度
- 工業標準化法
- 法律の成立の背景及び目的
- 概要及び経緯
- 第4節 日本工業標準調査会
- JISC の全体概要
- JIS の制定、改正等におけるJISC の役割
- 国際標準化活動におけるJISC の役割
- 第1節 日本の工業標準の歴史
- 第7章 知的財産と標準化
- 第1節 知的財産と標準化の関係
- 知的創造活動と標準化活動の役割
- 知的財産と標準化の交錯
- 交錯を解決する考え方
- 第2節 パテントポリシー
- パテントポリシーの歴史
- パテントポリシーの問題
- JISC におけるパテントポリシー
- 第3節 パテントプール
- 標準におけるパテントプール
- パテントプールの利点・欠点
- 標準に関わるパテントプールの例
- 第4 節 規格の著作権の考え方
- JIS 規格に係る著作権の考え方
- 国際規格(ISO/IEC)に係る著作権の考え方
- 第1節 知的財産と標準化の関係
- 第8章 日本の適合性評価制度
- 第1節 JIS マーク表示制度、JNLA 制度
- JIS 法に基づく適合性評価制度の概要
- JIS マーク表示制度
- JNLA 制度
- 第2節 マネジメントシステム規格に関する審査登録制度
- 品質マネジメントシステム
- 環境マネジメントシステム
- そのほかのマネジメントシステムに関する審査登録制度
- 審査登録のしくみ
- 第3節 電気用品安全法における製品認証制度
- 電気用品安全法の変遷
- 電気用品安全法による認証の概要
- 技術基準
- S マーク制度
- 第1節 JIS マーク表示制度、JNLA 制度
- 第9章 国際的標準化動向
- 第1節 WTO/TBT 協定
- WTO とは?
- 最恵国待遇原則
- 内国民待遇原則
- 貿易の技術的障害に関する協定(TBT 協定)
- 政府調達協定
- 第2節 欧州の標準化動向
- 欧州標準化機関~CEN、CENELEC、ETSI~
- 英国規格協会
- ドイツ規格協会
- フランス規格協会
- 欧州の標準化戦略
- 第3節 米国の標準化動向
- 標準化制度の概要
- ANSI
- NIST
- 主な規格開発機関
- 適合性評価について
- 米国の標準化戦略
- 第4節 中国の標準化動向
- 標準化制度
- 適合性評価制度
- 第1節 WTO/TBT 協定
- 索引
この目次を見れば分かるように、標準化に関する情報がコンパクトにまとまっており、「標準化実務入門」を読めば、標準化の基礎的知識を得ることができるようになっていると思います。
例えば、第3節 ビジネス主体から見た標準化の効果には、次のような標準化のメリット・デメリットが解説されています。
- メリット
- コストダウン
- 市場拡大
- デメリット
- 差別化困難と価格競争
- 技術漏洩
- 新技術市場創設困難
これから標準化戦略を取り入れようと考えている企業は、上述のデメリットの記載を読んで、本当に標準化を進めてよいのか検討した方が良いと思います。
この他、「標準化実務入門」には、標準化に関する様々な情報が記載されいます。市販の書籍を買って読むよりも、まずこの資料を読んでみることをお勧めいたします。
私も実務に活用させていただいています。
なお、この他に、日本規格協会グループからも研修に使える教材が公表されています。
研修に使える教材はこちら
弊所では、標準化に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。