令和2年改正種苗法に関する資料が公表されています
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログで令和2年改正種苗法が成立したと書きましたが、その改正種苗法に関する資料(改正種苗法全国Web説明会・ブロック説明会説明資料)が公表されましたので、今回はそれについて書きます。
令和2年改正種苗法に関する資料はこちら
この資料は、農林水産省が令和3年1月22日から開催している「改正種苗法に関するWeb説明会」で使用されている資料です。
さて、この資料の内容ですが、次のような目次となっています。
- 種苗法改正の背景
- 優良な新品種が支える我が国農業
- 品種開発には多くのコストが必要
- 適切に管理された品種への更新は農業者の所得向上につながる
- 種苗法は優良な品種を保護し新品種の開発を促進する制度である
- 既存品種が大企業等に勝手に品種登録されてしまうとの誤解
- 強制的に特定の登録品種の利用を強要されるとの誤解
- 我が国で開発された優良品種の海外流出
- 登録品種の海外流出に係る課題
- 種苗法の改正内容とその留意点
- 改正種苗法の全体像
- 輸出先国の指定(海外持ち出し制限)
- 輸出先国の指定(海外持ち出し制限)(経過措置)
- 国内の栽培地域指定(指定地域外の栽培の制限)
- 登録品種の増殖は許諾に基づき行う
- 登録品種の表示の義務化
- 審査手数料の設定と、出願料及び登録料引き下げ
- 育成者権を活用しやすくするための措置①(特性表の活用)
- 育成者権を活用しやすくするための措置②(訂正制度の導入)
- 育成者権を活用しやすくするための措置③(判定制度の創設)
- 職務育成規定の見直し
- 在外出願者の国内代理人の必置義務化
- 指定種苗の販売時の表示の在り方の明確化
これらの改正事項は、実務的にも非常に重要ですので、全ての事項についてこの資料を読んで確認していただきたいのですが、育成者権を取得する際に影響する重要な改正事項は、審査手数料が新たに設けらることになったという点だと思います。
現行法では、出願料(47,200円)に審査手数料も含まれていたのですが、今回改正により、出願料自体は14,000円に減額されますが、その額には審査手数料が含まれなくなり、別途審査費用がかかることになりました。
なお、審査手数料については、今後、実費相当の所要額を勘案して省令で定めることになっています。
ちなみに、過去の審査実績の実費は、93,000円/回(年)程度と記載されています。
ただし、通常審査とは違う特性(病虫害抵抗性等の特別な調査又は試験を要するもの)の場合には、別途審査手数料が必要となるようです。
したがいまして、出願品種の特性で、今までになかったような特性を有することを主張する場合には、より高額の審査手数料がかかることになりそうです。
これはあくまで個人的な意見ですが、今までの審査手数料が少な過ぎたのではないかと思います。
(書面のみの特許の場合であっても、15万円~20万円程度かかることが多いです。)
今後手数料は、実費相当額になりますので、審査官の数を審査数に見合った人数に増やすことができると思います。
(現状は、あまりにも審査官の数が少な過ぎると思います。)
このように、令和2年改正種苗法は、以前のブログに書いた事項だけでなく、審査の実務にも影響するものとなっております。
逐条解説等が公表・出版されていない現状では、改正種苗法に関する資料としては、これが最も正確な資料になります。
植物品種の育成に関わっている方は、この資料に目を通して、今後の品種登録の出願戦略や訴訟戦略に活かしてください!
弊所では、種苗法に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。
追記:令和2年改正種苗法に関する資料が改訂されたので、リンク先をその改訂版に変更(2021/8/21)