RCEP協定における産業財産権分野の概要
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログに、日英EPAにおける産業財産権分野の概要について書きましたが、今回は2020年11月15日に日本政府が署名した「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定における産業財産権分野の主な規定の概要」について書きます。
RCEP協定における産業財産権分野の主な規定の概要に関する特許庁のプレスリリースはこちら
RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)協定とは、ASEAN加盟10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と、そのFTAパートナー5カ国(オーストラリア、中国、日本、ニュージーランド、韓国)の間で、2020年11月15日に署名された自由貿易協定です。
なお、RCEP協定には、今後インドも加入できるように、「インドの地域的な包括的経済連携(RCEP)への参加に係る閣僚宣言」も発出されています。
さて、このRCEPには、主に次のような分野に関するルールが整備されています。
- 物品の貿易
- 原産地規則
- 税関手続及び貿易円滑化
- 衛生植物検疫措置
- 任意規格、強制規格及び適合性評価手続
- 貿易上の救済
- サービスの貿易
- 自然人の一時的な移動
- 投資
- 知的財産
- 電子商取引
- 競争
- 中小企業・経済協力及び技術協力
- 政府調達
- 紛争解決
これらのうち、知的財産に関しては、次のような規定が定められています。
- 手続の簡素化・透明化
- 国際協定(第11.9条)
- 商標の出願手続の簡素化・透明化(第11.22条、第11.28条)
- 特許の出願公開(第11.44条)
- 知的財産の保護強化
- 商標権保護の強化(第11.26条、第11.27条)
- 商標・意匠の保護対象(第11.19条、第11.49条)
- インターネット公知情報の先行技術・先行意匠としての認識(第11.45条、第11.50条)
- エンフォースメント強化
- 当局による損害賠償の支払い命令権限(第11.60条)
- 不正商標商品等の廃棄命令権限(第11.72条)と職権による輸入差止め手続の確保(第11.69条)
これらを見ると、日本の特許法、意匠法や商標法では、当たり前に規定されている事項が多いと思われるかもしれません。
しかし、海外、特に東南アジア地域では、これらの事項について、きちんと整備されていない国が多くあります。
実際、RCEP協定が施行されたとしても、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムには、これらの事項のうちのいくつかについて猶予期間が認められています。
ただ、いずれにしても、東南アジア地域での知的財産に関する法整備が進むのは間違いないと思います。
今後発展が期待される地域ですので、これらの地域での知的財産法について注意を払っていた方がよいと思います。
弊所では、東南アジア地域での特許、意匠や商標等の知的財産に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。