「素形材産業取引ガイドライン」が改訂されました(2020)
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2020年6月に、経済産業省から「素形材産業取引ガイドライン」の改訂版が公表されましたので、今回はそれについて書きます。
「素形材産業取引ガイドライン(令和2年6月版)」はこちら
このガイドラインは、公正な取引の実現により、公正な競争が行われる環境を整えるとともに、素形材企業及び取引先企業の競争力の強化につなげることを目標として策定されました。
さて、このガイドラインの内容ですが、次のような目次となっています。
- はじめに 素形材産業取引ガイドラインについて
- 第1章 取引慣行に関わる法規について
- 第2章 取引事例に係る主な意見と関連法規等に関する留意点及び目指すべき取引方法
- 補給品の価格設定
- 型保管・廃棄・返却費用の負担
- 分割納品、運送費用の負担
- 原材料価格、エネルギー価格(電気・ガス等の燃料費)、運送費、労務費等のコスト増の転嫁
- 発注者の予算単価・価格による一方的な契約単価・価格の要求
- 企業努力の適正評価(技術開発成果等を反映した価格形成)
- 不利な契約条件の押し付け
- 見積時の予定単価による発注及び発注内容の変更に伴う負担
- 発注時の数量と納品数量の食い違い
- 受領拒否
- 検収遅延(その他支払条件について)
- 有償支給材の早期決済及び在庫保管
- 図面・ノウハウの流出
- 消費税の転嫁
- 書面交付義務
- トンネル会社を使った下請法逃れ
- 第3章 海外における適正取引の推進
- 我が国企業の国際展開と海外での適正取引推進の要請
- 外における適正取引推進のために留意すべき点
- 第4章 本ガイドラインの今後の展開
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律上の留意点
- 下請代金支払遅延等防止法上の留意点
- 消費税転嫁対策特別措置法上の留意点
- 下請中小企業振興法及び振興基準について
- 委員名簿
- 参考資料 主な相談窓口
これらの項目のうち、第2章及び第3章に記載されている事項は、実務的には重要なものとなっています。
素形材産業に係る企業が、大手企業等と契約を締結する際には、その契約内容が、ここに解説されている事項に抵触していないか確認した方がよいと思います。
例えば、第2章の「13. 図面・ノウハウの流出」の(2)関連法規に関する留意点の①図面・ノウハウの提供要請の欄には、次のような記載があります。
「図面・ノウハウの流出それ自体は下請法により規制されるものではない。ただし、下請法の適用対象となる取引を行う場合には、部品・型の製造委託を行った際に、発注書面上の給付の内容に型の図面や製造ノウハウ、特許権等の知的財産権が含まれていないにもかかわらず、部品・型の納入に併せて当該図面や製造ノウハウ、特許権等の知的財産権を無償で提供させ、受注者の利益を不当に害する場合には、下請法上の「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に当たり、問題となる(下請法第4条第2項第3号)。
なお、下請法の適用を受けない取引においても、同様の行為を行った場合、「優越的地位の濫用」に当たり、独占禁止法上の問題となるおそれがある。」
そして、このガイドラインでは、このような状況を回避するための解決策も提示されています。
たとえば、(4)具体的なベストプラクティスの④には、次のように記載されています。
「以前は発注者からの要請で図面を提出していたが、経済産業省の指針を理由に図面の提出を断っている。」
このように、このガイドラインは、法律上の問題点を解説してくれると共に、具体的な対応方法まで提示してくれています。
もちろん、この対応策では上手く行かないことがあるとは思いますが、この対応策を参考にすることによって、より適切な契約を締結することができるようになるかもしれません。
是非、このガイドラインを活用してください!
日本では、契約書を取り交わさず取引をしている業界もまだまだ多いと思いますが、契約を締結することにより無駄な争いを防止することができるかもしれませんよ。
弊所では、このようなガイドラインを考慮した契約に関するご相談も承っております。
何かありましたら、遠慮なくお問い合わせください。
今日は以上です。