こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
私が伴走コンサルタントとして協力させていただいている”医療機器開発支援ネットワーク(MEDIC)”から、令和2年3月に「医療機器開発における知財対策ガイドブック」が公表されましたので、今回はそれについて書きます。
「医療機器開発における知財対策ガイドブック」はこちら
このガイドブックは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が、医療機関側、中小・ベンチャー企業側の双方において医療機器ビジネスにおける知的財産戦略や知的財産マネジメントの一助になることを目的として作成されました。
さて、このガイドブックの内容ですが、次のような目次となっています。
- 医工連携での知財問題を俯瞰する
- 医療機器における知財とは?
- 医療機器ビジネスにおける知財の重要性
- 知財をどのように活用するか?考えよう
- 医療機器の開発~事業化道程
- 知的財産を「活用する」 /知的財産を「守る」/知的財産を「創る」
- 知的財産チェックリスト
- 「誓約書・覚秘密保持契の取り交し」
- 知的財産を守るための文書
- 誓約書(サンプル)
- 誓約書を使う想定場面
- 覚書(サンプル)
- 覚書を使う想定場面
- 秘密保持契約書(サンプル)
- ちょっと一息
- 「共同研究・開発契約の締結」
- 「共同研究・開発契約」締結の前に
- 共同研究・開発契約と知財
- 「共同研究・開発契約」ひな形の参考
- 共有?単独?
- 企業単独の場合
- 医療機関単独の場合
- 共有知財の場合
- 知財の「持分」の取扱い
この目次を見て分かるかもしれませんが、以前ご紹介した資料と、このガイドブックとの大きな違いは、医療機関と、中小・ベンチャー企業との間での知的財産の取扱いに比重が置かれていることだと思います。
このガイドブックでは、連携を始める前に、誓約書・覚書・秘密保持契約書等を締結することを勧めています。そして、これらの契約の中に、知的財産の取扱いに関する条項が、直接または間接的に定められています。
そして、このガイドブックでは、その後に締結されることが多い、共同研究契約や共同開発契約においては、知財の帰属や知財を利用した際の対価等を定めておくことを勧めています。
さらには、知的財産を単独所有とする場合または共有とする場合において、中小・ベンチャー企業側や医療機関側が検討すべき事項についても分かり易く記載されています。
例えば、中小・ベンチャー企業が、知的財産を単独で所有することになった場合に、検討すべき事項として次のようなものが挙げられています。
- 医療従事者に経済的なインセンティブを
- 非経済的なインセンティブもある
- ライセンス料の支払
一方、医療機関が、知的財産を単独で所有することになった場合に、検討すべき事項として次のようなものが挙げられています。
- 模倣品が出回ってしまったら
- ライセンス料の支払
さらに、知的財産を共有することになった場合に、検討すべき事項として次のようなものが挙げられています。
- 不実施補償(独占実施補償)への対応
- 他の企業と事業連携する場合
- M&AによるEXITを目指す場合
これらの部分を読むことによって、事案に応じて、知的財産をどのように取り扱った方が良いか判断ができるようになるかもしれません。
なお、上記のような事項については、大学等の公的研究機関と、中小・ベンチャー企業とが共同研究等を始める際にも参考になるかもしれません。
これから、共同研究をしようと考えている医療機関や中小・ベンチャー企業には、非常に役立つ資料だと思いますので、是非目を通しておくことをお勧めいたします。
(以前は、公的研究機関と中小企業との共同研究に役立つ資料が多かったのですが、最近は医療機器分野等の領域を限定した資料が増えてきたように思います。)
このような資料は、一般的な書籍では記載されていない事項が解説されていますので、貴重なものだと思います。
是非活用してください!
弊所では、医療機器開発サポートに力を入れております。
医療機器の知的財産面に関して何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。