「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」が公表されました2
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
前回のブログで「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインーノウハウ活用編ー」をご紹介しましたが、今回は「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインーデータ活用編ー」をご紹介します。
「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインーデータ活用編ー」はこちら
このガイドラインも「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」の一部になります。
さて、このガイドライン(データ活用編)ですが、次のような目次となっています。
- 総論
- 目的
- 経済産業省「AI・データ契約ガイドライン データ編」等との関係
- 経済産業省「AI・データ契約ガイドライン データ編」との関係
- 文部科学省「さくらツール」との関係
- データ流出や不正利用を防止する各種手段
- 契約による保護
- 不正競争防止法による保護
- 民法上の不法行為による保護
- 不正アクセス禁止法による保護
- 不正利用等を防止する技術
- 本ガイドライン(データ利活用編)の対象範囲
- 契約当事者および対象読者に関する留意点
- 契約当事者に関する問題点
- 対象読者に関する留意点
- 「データ提供型」契約のモデル契約書案
- データ提供型契約の意義
- 定義規定
- 提供データ等の定義
- 提供データ等の利用権限
- 「提供データ等」の特定
- データの粒度
- 個人情報等の取扱
- 利用目的の特定
- 提供データ等の提供方法
- 提供データ等の提供方法の特定
- 「提供データ等」の中に個人情報等が含まれる場合の配慮
- 提供データ等の利用許諾または譲渡
- データ提供型契約の類型
- 一方向利用許諾型
- 譲渡型
- 双方向利用型(共同利用型)
- データ提供者による利用停止措置
- 対価・支払条件
- 対価の支払
- 売上を分配する際の留意点
- 提供データ等に関する保証および非保証
- 提供データ等の非保証に関する基本的な考え方
- 提供データ等の非保証の適用範囲
- 提供データ等を有償提供した場合
- 責任制限規定の利用
- データ提供者の表明保証
- 提供データ等の中に第三者が有していたデータがある場合の措置
- 責任の制限等
- 提供データ等を利用したことに起因して生じた損害についての負担
- 利用状況の報告および監査
- 利用状況の報告および監査
- データ受領者側による検討事項
- 監査費用の負担
- 派生データの利用状況の報告・監査等
- 提供データ等の管理
- データ受領者による提供データ等の管理責任
- データ受領者による状況報告
- 提供データ等をデータ受領者が第三者に提供する場合
- 管理義務違反の場合の損害賠償請求権
- データ漏えい等の場合の対応及び責任
- データ漏えい等の場合の対応
- 提供データ等に個人情報が含まれている場合の対応
- 損害賠償の制限
- 秘密保持義務
- 秘密保持義務
- データ提供者から、提供データ等に「秘密」と明示されて提供された場合
- 秘密保持義務の存続期間
- 派生データ等の取扱
- 派生データの利用権限に関する考え方
- 提供データ等または派生データの利用に基づき生じた知的財産権の帰属について
- 利用権限の行使方法
- 派生データの利用方法について知的財産権の共有規定を参考とする考え方
- 派生データの利用権限をデータ受領者のみに保持させる場合
- 派生データに対する非保証
- 契約解除後の派生データの利用権限
- 有効期間
- 契約解除
- 本契約の解除
- 契約終了後の提供データ等の削除等(第6項)
- データ漏えいの場合の損害賠償の制限(第4項および第7項)
- 不可抗力免責
- 権利義務の譲渡禁止
- 通知
- 主任担当者の指定
- 通知
- 存続条項
- 存続条項に関する基本的な考え方
- いかなる条項を存続することにするのか
- その他の一般規定
- 完全条項について
- 準拠法について
- 紛争解決条項について
- 「データ創出型」契約のモデル契約書案
- 「データ創出型」契約の意義
- 「データ創出型」契約における課題
- 適切な利用権限の調整
- 個人情報およびプライバシー権に対する配慮
- 定義規定
- 当初データ等の定義
- 当初データ等の特定
- 当初データ等の取得
- 当初データ等の取得に関する規定
- 当初データ等に個人情報が含まれている場合
- 当初データ等の中に第三者の知見、実験、発見、農作業その他の活動によって
- 取得されたデータがある場合の措置
- 当初データ等の利用権限等
- 当初データ等の利用権限
- 利用目的による制限
- 自己利用
- 第三者への提供/利用許諾
- 当初データ等の利用権限
- 「当初データ等」に対するデータ提供者のアクセス権について
- データ提供者による利用停止措置
- 当初データ等の利用権限等
- 派生データの利用権限等
- 派生データの利用権限に関する考え方
- 派生データに関する各自の利用権限
- 利用目的による制限
- 自己利用
- 第三者への提供/利用許諾
- 派生データの利用に基づき生じた知的財産権の帰属について
- 「派生データ」に対するデータ提供者のアクセス権について
- 当初データ等および派生データの非保証
- 利用権限の配分に対する対価等 79
- 報告・監査等
- 10 相手方受領データの管理
- データ受領者およびデータ提供者の管理責任
- 提供データ等の管理
- 当初データ等の管理
- 当初データ等の管理責任の考え方
- 当初データ等の管理責任をデータ提供者側に負担させるべきか
- 派生データの管理
- 派生データの管理責任の考え方
- データ提供者に派生データの管理責任を負担させるべきか
- データ提供者側に法的な管理義務を課さない場合も、管理状況の報告義務を課すことはできるか。
- 相手方受領データの第三者提供
- データ漏えい等の場合の対応及び責任
- データ漏えい等の場合の対応
- 第三者の権利により利用が制限される場合の処理
- 責任の制限等
- 秘密保持義務
- 秘密保持に関する基本的な考え方
- 違約金条項
- 新たなデータ創出の場合の対応
- 有効期間等その他一般規定
- 契約の解除
- 契約終了後の当初データ等の削除等の適用の有無
- 削除等の証明
- 不可抗力免責
- 権利義務の譲渡禁止
- 通知
- 存続条項
- その他の一般規定
- 「データ共用型」規約のモデル契約書案
- 「データ共用型」契約の意義
- 「データ共用型」契約における検討事項
- 契約当事者
- 契約の種類と数
- データ共用型契約のスコープ
- データ共用型契約の契約フォーム
- プラットフォーム事業者の責任
- 利益分配について
- 定義規定
- プラットフォームの定義
- 「プラットフォーム」の定義
- データ提供者のスコープ
- 複数の事業者の意味
- 本ガイドライン(データ利活用編)が対象とするプラットフォームのスコープ
- 同一企業グループ内で構築されるプラットフォームやSNS等
- クラウドサービス型およびデータ流通市場型(またはマーケットプレイス型)
- プラットフォームに提供されるデータの種類
- プラットフォームの役割
- 参加者の範囲
- プラットフォームの定義
- プラットフォームの利用許諾
- プラットフォームの利用許諾
- プラットフォームに参加が可能な当事者
- 提供データの提供方法
- 提供データの提供方法
- プラットフォーム事業者には、一切の「プライベート・データ」に対するアクセス権限が付与されない場合
- 提供データに個人情報が含まれている場合
- 提供データに関する適切な取得および保証/非保証
- 適法かつ適切な取得
- 当初取得者からの同意取得
- 提供データに関するデータ提供者の責任(保証/非保証)
- データ提供者による提供データのデータ利用者への提供
- プラットフォームの管理画面上での設定
- アクセス・キーの付与
- データの利用停止措置
- プライベート・データの管理責任
- 提供データを利用した結果生じた権利の帰属
- 提供データに関してデータ提供者が創作した著作物がプラットフォーム事業者に提供されている場合のみなし利用許諾
- データ利用者による提供データの利用
- データ利用者による利用の範囲
- データ利用者の関連会社等が関連会社等ではなくなった場合の措置
- データの利用に基づき生じた権利の帰属
- 提供データの管理
- データ利用者の管理責任
- プラットフォーム事業者の管理責任
- プラットフォーム事業者の運営責任等
- プラットフォーム事業者の運営責任等
- プラットフォーム事業者の責任限定
- 提供データの内容に関するプラットフォーム事業者の非保証
- プラットフォーム事業者の監査権
- プラットフォームに対する苦情処理
- プラットフォーム事業者による利用サービスの提供
- プラットフォーム事業者による利用サービスの提供
- 統計データの提供
- 利用サービスに関する権利の帰属
- 責任の制限等
- 責任制限規定
- 派生データ等の取扱
- 派生データの作成等におけるプラットフォーム事業者の責任
- 派生データの知的財産権の帰属
- データ提供者またはデータ利用者が派生データまたは利用サービスを利用して新たな成果物を作成したり、新たなサービスを構築した場合の権利の帰属
- データ漏えい等の場合の対応
- データ漏えい等の場合の措置
- データ漏えい等が発生した場合の責任
- 秘密保持義務
- 秘密保持義務を負担する相手方について
- プラットフォーム型で想定される秘密情報
- 規約の解除
- 解除当事者と解除事由
- 参加者が申込フォームに虚偽の記載をした場合
- プラットフォーム事業者によるアクセスの一時停止措置
- 契約解除時の派生データの利用停止および削除義務等
- プラットフォーム事業者が規約を解除される場合の解除の効力
- 規約解除または脱退の場合の成果物の帰属について
- データの削除等の措置との関係について
- データ提供者が本規約を解除された場合
- データ提供者が脱退した場合/データ提供者が本規約を解除した場合
- 提供データ(プライベート・データ)の取扱
- 共有となる権利の取扱
- データ提供者に単独に帰属する権利の取扱
- プラットフォームからの脱退
- プラットフォームからの脱退と脱退時のデータ利用中止義務等
- 脱退時のデータ利用中止義務等
- データ提供者が脱退した場合のプラットフォーム事業者の提供データ削除義務
- プラットフォーム参加者が脱退した場合の共有の権利の帰属
- データ提供者がプラットフォームから脱退した場合のデータ提供者の権利の取扱
- 不可抗力免責
- 権利義務の譲渡禁止
- 同意を取得する相手方について
- プラットフォーム事業者の規約の地位の譲渡
- 通知
- 存続条項
- その他の一般規定
- 合意管轄条項について
これらの目次を見ると、契約に関係する各法律の説明から、契約のモデル契約書案に規定されている各条項について詳細な説明がなされていることが分かると思います。
特に、このガイドラインの総論の目的には、「栽培ノウハウに代表される農業現場の財産を新しい「知的財産」として捉え、当該知的財産の保有者が当該知的財産の提供範囲を設定することによって、その知的財産の価値に見合った正当な対価を得られるような仕組みを提供するとともに、過度な保護によって知的財産の普及や利活用を妨げることがないように、知的財産の保護と利活用のバランスを考慮した仕組みを提供したものである。」と記載されています。
このことから、農林水産省は、農業分野における知的財産の重要性を認識しており、その取扱いに注意を払っていることが分かると思います。
例えば、このガイドラインの「提供データ等または派生データの利用に基づき生じた知的財産権の帰属について」には、十分なページ数が割かれています。
特に、「提供データ等または派生データの利用に基づき生じた知的財産権」は、契約する際に最も揉める事項であることから、データ提供者とデータ受領者との関係を考慮して「提供データ等または派生データの利用に基づき生じた知的財産権も、原則として、データ提供者とデータ受領者の共有とすることとした」と説明されています。
(これが本当に妥当かどうかは事案によって変わると思いますが。。)
これらのことから、このガイドラインは、農業分野におけるデータに関する契約に関する考え方を示すものとなる可能性があります。
したがって、これから農業分野でデータ利用に関与しようとする企業や農業従事者等は、是非このガイドラインをご覧になってください。
弊所では、農業分野における共同開発契約、データの利用許諾を含めた契約交渉およびライセンス契約書のご相談も承っております。
これらに関して何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。