「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が改訂されました(2019)
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
昨年に引き続き、令和1年12月19日に「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が改訂されましたので、今回はそれについて書きます。
電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和元年12月)はこちら
なお、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂は毎年のように行われていますが、従来と異なり、今回の改訂は年末になりました。しかも、パブリックコメント(パブコメ)も行われていません。
この理由は、今回の改訂が平成30年の不正競争防止法の改正および著作権法の改正を踏まえたもので、最小限の改訂となっているからのようです。
さて、今年度の改訂版では、次の事項について改訂されました。
- Ⅱ-7 ID・パスワード等のインターネット上での提供
- 【不競法】「技術的制限手段」の効果を妨げる行為に対する規律の強化に伴い、内容修正。
- 【著作権法】著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備
(アクセスコントロールの回避等に関する措置)に伴い、内容修正。
- Ⅱ-9-1 インターネット上の著作物の利用
- 【著作権法】デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備に伴い、脚注の内容修正。
- Ⅱ-9-4 eラーニングにおける他人の著作物の利用
- 【著作権法】教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備を踏まえ、内容修正。
- Ⅲ-8 ユーザーの知的財産権譲受人への対抗
- 【著作権法】デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備に伴い、内容修正。
- Ⅲ-10 使用機能、使用期間等が制限されたソフトウェア(体験版ソフトウェア、期間制限ソフトウェア等)の制限の解除方法を提供した場合の責任
- 【不競法】「技術的制限手段」の効果を妨げる行為に対する規律の強化に伴い、内容修正。また、脚注8の引用裁判例を、不競法改正の説明において援用されている裁判例に変更。
- Ⅲ-11 データ集合の利用行為に関する法的取扱い
- 【不競法】「限定提供データ」の不正取得・使用等に対する民事措置の創設に伴い、内容修正。営業秘密に関する記述の見直し等も併せて実施。
- 【著作権法】デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備に伴い、内容修正。
- 【その他】全体構成を変更。
- Ⅱ-3 P2Pファイル共有ソフトウェアの共有
- 【著作権法】平成26年改正(出版権の整備)を受けた内容修正。
- Ⅱ-9-3 著作物の写り込み
- 【著作権法】平成24年改正(付随対象著作物の利用)に関する記述につき、時間の経過に伴い、表現見直し。
- その他(条文番号の修正や表現の微修正等)
- Ⅱ-2 他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点
- Ⅱ-5 ドメイン名の不正取得等
- Ⅱ-9-2 サムネイル画像と著作権
これらの改正部分を見ると、不正競争防止法や著作権法の改正に伴って、必要最小限の修正が加えられていることが分かります。
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和元年12月)」を読んで分からない部分については、次のブログで紹介している各法律の改正資料を読むことをお勧めいたします。
- 不正競争防止法の逐条解説(令和元年7月1日施行版)
- 限定提供データに関する指針
- 平成30年度改正著作権法の解説
- デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定(30条の4、47条の4、47条の5等)に関する基本的な考え方
なお、経済産業省は、2020年4月1日に施行予定の民法(債権関係)改正を踏まえた改訂作業を行っており、来年度にはこれを反映した「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂版が公表されるようです。
弊所では、この準則で解説されている事項に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。