「農林水産業・食品産業の公的研究機関等のための知財マネジメントの手引き」をご存知ですか?

「農林水産業・食品産業の公的研究機関等のための知財マネジメントの手引き」をご存知ですか?

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

農林水産業・食品産業の公的研究機関等のための知財マネジメントの手引きの表紙
引用:農林水産業・食品産業の公的研究機関等のための知財マネジメントの手引き

最近は農林水産業の分野でもJA等が知的財産に力を入れてきていますが、「農林水産業・食品産業の公的研究機関等のための知財マネジメントの手引き」をご存知でしょうか?

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この手引きは、農林水産業・食品産業に関する研究に取り組む公的研究機関等の適切な知財マネジメントの実施および能力向上に資することを目的として、農林水産省の知財マネジメントの強化支援検討委員会によって作成されました。

これは、日本の農林水産業に関する研究開発は、他の産業と比較して、都道府県の公設試験場、国立研究開発法人等の公的研究機関に属する研究従事者の割合が大きく、公的研究機関等による技術の公開や実施許諾、普及に向けた技術移転を通じて、研究成果の社会実装につながるケースが多いからという理由によると説明されています。

私の経験でも、電気電子分野等の他分野と比較して、イチゴやコメの品種改良や農業技術の研究開発は、公的研究等によってなされることが多いのではないかと感じています。

この手引きは公的研究機関向けの資料となっていますが、後述するように、公的研究機関等との共同研究や技術導入を考えている民間企業にも役立つ情報が記載されていますので、今回ご紹介いたします。

さて、この手引きの内容ですが、次のような目次になっています。

  1. 目次
  2. まえがき
  3. 本「手引き」について
  4. 知財マネジメントの在り方
    1. 知財マネジメントを実施する目的
    2. ビジネスモデル検討と事業化の重要性
    3. 研究開発プロジェクトごとの知財マネジメントの最適化
    4. 権利化と非権利化(公知化・秘匿化)を適切に使い分け・組み合わせた知財戦略への留意
    5. 知財マネジメント実施体制の整備
    6. 産学官連携
    7. ブランド価値の向上
  5. 知財マネジメントの基盤の整備
    1. 研究開発を事業化するインセンティブの確保
    2. 知財マネジメント担当の設置
    3. 知財マネジメント重視の姿勢
    4. 知財マネジメントに関する基本方針の策定
    5. 人材育成
    6. 外部専門家との連携
    7. 業務マニュアル・規定の整備
  6. 研究開発前、研究開発中の知財マネジメント
    1. 研究テーマの設定
    2. ビジネスモデルの検討
    3. 知的財産に関するリスク
    4. 知見の提供に係る民間事業者からの聴取に関する留意事項
    5. 試料(遺伝資源)提供・受け入れ契約の留意点
    6. 共同研究/受託研究契約の留意点
  7. 研究成果の保護と活用
    1. 育成者権、特許権、商標権等と営業秘密、公知化の組み合わせ
    2. 品種名称と商標の関係
    3. ライセンス契約(利用(実施)許諾契約)の留意点
    4. 対価の設定の基本的な考え方
    5. 海外出願の重要性と留意事項
    6. 知的財産権の棚卸
    7. 研究データの取扱い
    8. 侵害調査
    9. 侵害調査の結果に基づく侵害対応
  8. 事例集
    1. あまおう「新品種の開発・普及と知的財産保護・活用」
    2. シナノゴールド「新品種の海外展開」
    3. 茶葉とビワ葉による高機能発酵茶「産学官連携における知財マネジメント」
    4. るりおとめ「マーケティングを基礎にした研究開発」
    5. よつぼし「民間企業と連携した海外展開」
  9. 参考文献

この目次から分かると思いますが、前半は知財マネジメントの考え方や体制について説明されています。

技術移転を受けようとする民間企業からすると、「研究開発前、研究開発中の知財マネジメント」以降の項目が重要になると思います。

特に「共同研究/受託研究契約の留意点」には、公的研究機関等と民間企業とでよく問題となる「成果の帰属・取扱い」、「第三者へのライセンス」や「成果の公表」等が説明されいます。

また、「研究成果の保護と活用」には、「ライセンス契約(利用(実施)許諾)の留意点」や「対価設定の基本的な考え方」が記載されています。

これらを読めば、これらの項目に対する公的研究機関等の考え方がある程度分かると思います。

公的研究機関等との共同研究や技術導入を考えている企業は、公的研究機関等の考え方を理解した上で、共同研究契約書やライセンス契約書について交渉して行った方が良いでしょう。

私の産総研勤務時代の経験でも、公的研究機関等では民間企業では考えられないような公的研究機関等ならではの制約があり、民間企業同士では当たり前の条項に同意できないということもあり得ます

是非この資料を読んで、公的研究機関等との良好な関係を構築し、素晴らしい技術開発を行ってください。

弊所では、農林水産業分野における共同研究契約やライセンス契約のご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください

今日は以上です。

この記事を書いた人

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