自社が使用している名称を先に商標登録されてしまった事例・・・その後
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログで紹介したWebサイトの名称として使用していたものが、競合会社に商標登録されてしまったので、無効審判を請求したという事案に関して、進展がありましたので、今回はそれについて書きます。
具体的には、株式会社Mogura(申立人)が、VR・AR関連ニュースメディアの名称として使用していたMoguraVR」という商標に関して、VR関連の情報を扱うウェブメディア「VR Inside」を運営しているスパイシーソフト株式会社(被請求人)が商標登録(本件商標登録)したのは無効であるとして、無効審判(無効2017-890072)を請求したという事案です。
結論としては、「本件審判の請求は、成り立たない」という結論で、本件商標登録が維持されました(商標登録を無効にすることはできませんでした)。
この審決書には、不成立の理由が次のように記載されています。
- 引用商標の周知著名性について
「以上を総合的に判断すれば、引用商標が請求人の業務に係る請求人役務を表すものとして、本件商標の登録出願時において、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。」 - 商標法第4条第1項第7号の該当性について
「請求人は、引用商標の使用開始に当たって、その商標を自ら登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら登録出願しなかった責めを被請求人に求めるべき具体的な事情を見いだすこともできない。
・・・してみれば、たとえ、被請求人が請求人の商標を知っていたとしても、上記接触があったことのみに基づいて、本件商標の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような事情があったとまでは断定することはできないから、本件商標が『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ』がある商標に該当するということはできない。」 - 商標法第4条第1項第10号の該当性について
「・・・引用商標が、申立人役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが認められているところ、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであるから、・・・商標法第4条第1項第10号の要件を欠くものである。」 - 商標法第4条第1項第15号の該当性について
「・・・引用商標は、我が国の需要者に広く認識されていたものではなく、かつ、その独創性も極めて高いものではないから、本件商標をその指定役務中のいずれかの役務に使用しても、これに接する需要者が、引用商標を想起し連想して、当該役務を、請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じるおそれがある商標ということはできない。」
このように、株式会社Moguraが主張した無効理由は、無効審判においてことごとく否定されてしまいました。
この事案から分かるように、自分が使用していた商標と同一または類似するものが、同一または類似の指定商品・役務について、先に商標登録されてしまうと、これを無効にすることはなかなか難しいです。
商標登録は早い者勝ちの世界です!
この無効審決書にも、使用していた商標(引用商標)を自ら登録出願する機会は十分にあったと記載されています(上記赤文字の文章を参照)。
費用的にも、無効審判請求費用と比較すれば、商標登録に係る費用は通常数分の1で済むことが多いです。
本件のような状況にならないようにするためにも、会社名、商品名やネットを使ったサービス名について商標登録をしていない場合には、早急に商標登録しておくことをお勧めいたします。
弊所では、商標登録だけでなく、先取り商標対策に関する相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。