「ベンチャー投資家のための知的財産に対する評価・支援の手引き」が公表されました
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2019年6月28日に、特許庁から「ベンチャー投資家のための知的財産に対する評価・支援の手引き~よくある知財の落とし穴とその対策~」が公表されましたので、今回はこれについて書きます。
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この手引きは、『ベンチャー企業の知財戦略を強化するためには、創業期から付き合っている投資家のアドバイスが鍵を握ります。また、投資家はアドバイスだけでなく、ベンチャー企業に必要な知財戦略のコストを資金面から支えることができます。「投資家にベンチャー企業の知財戦略をさらに支えてほしい」という想い』から作成されました。
さて、この手引きは、次のような目次となっています。
- はじめに
- エグゼクティブサマリー
- 投資家による知的財産支援の意義
- 投資家による知的財産支援とは
- ラウンド別の知財マイルストーンの落とし穴
- エンジェルラウンド
- 落とし穴1 事業計画の中に知財戦略がない
- 落とし⽳2 コア技術の出願前に学会・論⽂発表や共同研究先への開⽰を⾏ってしまい、基本特許を取れない
- 落とし⽳3 共同研究契約の条件で知的財産の活用に制約がつき、大学からライセンスできなくなる
- シードラウンド
- 落とし⽳4 大学で出願した基本特許はあるが、商用化の観点から権利化されていない
- 落とし⽳5 大学とのライセンス契約の条項に課題があり、起業後の企業価値の向上やEXIT に問題が生じる
- シリーズAラウンド
- 落とし⽳6 知財がビジネスモデルと対応していない
- 落とし⽳7 持ち株⽐率が低いためにCTO が発明を出し惜しみし、継続的な知財の創出が難しくなる
- シリーズB ラウンド
- 落とし⽳8 基本特許は確保したが、他社に周辺知財を押さえられてしまい、事業がスケールしない
- シリーズC ラウンド
- 落とし⽳9 IPO 直前に競合他社から侵害警告・訴訟を受ける
- 落とし⽳10 海外展開を目指しているが、知財・標準化戦略が国内市場向けに留まっている
- CVC
- 落とし⽳11 EXIT シナリオを自社との協業だけにフォーカスし過ぎてしまう
- 落とし⽳12 既存領域の投資では自前主義や大企業の知財管理の観点により、評価の客観性が不⾜する
- 落とし⽳13 新規領域への投資では事業部・知財部の評価能⼒、ハンズオン能⼒が不⾜する
- エンジェルラウンド
- 知財評価・支援のための体制
- おわりに
詳細については、この手引きを読んでもらえばよいと思いますが、この手引きには、ベンチャー企業が陥りやすい落とし穴として、13の事例が紹介されています。
例えば、「落とし穴4 大学で出願した基本特許はあるが、商用化の観点から権利化されていない」では、よくあるケースとして具体例が挙げられています。
私もこのような実例は何度も見てきました。
特許の権利範囲は、特許請求の範囲という項目に記載するのですが、抽象的な文章で記載されているため、不慣れな人にとってはその範囲を理解しにくくなっています。
特に大学等の研究機関では、特許文書の読み方等を習っていないため、ベンチャー企業にとって不十分な特許になっている場合があります。
そして、この手引きでは、各落とし穴に対する対策も記載されています。
例えば、上記の落とし穴4の場合には、「大学発ベンチャーの事業範囲・用途・市場国
をカバーする知的財産を確実に権利化する」として、どのように考えていけばよいかが説明されています。
この他にも、様々なケースが紹介されています。
投資家は、弁理士や弁護士等の専門家に相談する前にアドバイスできる機会が多いと思います。
この手引きを読んで、ベンチャーが落とし穴にハマらないようにアドバイスしてください!
弊所では、ベンチャー企業のサポートも行っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。