「経営における知的財産戦略事例集」が公表されました
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
2019年6月に、特許庁から「経営における知的財産戦略事例集」が公表されましたので、今回はこれについて書きます。
経営における知的財産戦略事例集はこちら
この事例集は、我が国の幅広い企業の経営層・企画関係部門・知財関係部門等に周知し、我が国の産業競争力の強化に寄与することを目的として作成されました。
さて、この事例集の内容ですが、次のような目次となっています。
- Message 経営戦略と知財戦略の過去・現在・これから~経営層インタビュー~
- 小泉 文明 氏(メルカリ)
- Mr. Erich Andersen 氏(マイクロソフト)
- 中村 和重 氏(三鷹光器)
- 加藤 亘 氏(三菱電機)
- 御供 俊元 氏(ソニー)
- 岩田 淳 氏(ユニ・チャーム)
- Mr. Y.P. Jou 氏(ScienBiziP/元鴻海精密工業)
- Introduction 経営戦略と知的財産戦略は繋がっているのか
- 今、企業が直面する環境変化
- 厳しい環境下で持続的に価値を生み出すための経営課題
- 経営課題の解決に向けた提言
- 新事業創造に資する知財戦略
- 経営戦略の構築・実行に資する知財戦略
- Case Study 先進企業における知財戦略事例
- 新事業創造に資する知財戦略
- 事業構想・ビジネスモデル構築と同時に知財ポートフォリオ構築を進め、新規事業の競争力を増す
- スタートアップの知財戦略・パートナー企業とスタートアップの事業共創をサポートし、自社のサービス力向上
- シリコンバレーのスタートアップとの多種多様な「つながり」を設計し、多様な知財を新事業につなげる
- アウトバウンド型のオープンイノベーションを通じて、スタートアップと共に新たなサービスを創造
- 知財部門が自ら多様なお客様やパートナーとの連携を仕掛け、”つながるサービス”を推進
- 研究開発力を強みに患者・研究組織・異業種企業等を巻き込み、「製薬」を超えた顧客の課題に対応
- 異業種とのオープンイノベーションを通じてバリューチェーンの川下までアクセス、最新の顧客ニーズにあわせてサービスを最適化
- 「近未来デザイン」を起点に、将来のソリューションに資する事業・技術・知財を一体的に構想する
- 顧客が感じる価値(USP)をビジネスモデルや競合優位性から特定する価値ドリヴンの知財戦略を実行
- オープンイノベーション部門に知財機能を設置し、調査・出願の側面から協創活動を円滑化
- 戦略性・専門性・機動性の三つを強化すべく知財組織を再編し、知財部門主導でイノベーションを推進
- デザイン思考により顧客価値を構想。徹底した自前主義と知財戦略を通じ、独自のポジションを築く
- 知財部門主導で次世代商品のアイデアを考案、今は存在しない商品を設計することでR&D戦略を構築
- 社内アイデアを重要視し、特許化を積極的に行うことで、高いブランド価値を構築
- オープンソースを駆使することで、顧客の獲得やR&Dの高度化を実現
- 「新薬」と「後続薬」の両製品で異なる知財戦略をとり、外部の開発力+製造力を取り入れる
- 知財ポートフォリオと契約スキームの工夫により、独自のビジネスモデルを構築
- 強い基本特許を軸に、変化するビジネスモデル・多様なパートナーシップに対応する知財権を確保
- 自社技術をロイヤリティ・フリーでライセンスし、Gogoroの電池交換システムの利用者拡大へ
- 自社の高い技術力と有力な大学研究所等とのオープンイノベーションにより多様な製品を開発
- 製造現場に徹底して根差したIoTサービスを通じて、優れたデータを獲得しソリューションを高度化
- 顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援し、顧客の企業価値を高める知財戦略を実行
- 出願と製品・技術の改良、製品のローンチ等を同時に推進するスピード重視の知財戦略を実行
- 経営戦略の構築・実行に資する知財戦略
- 大手IT企業と連携して「パテントシールド」を構築し、スタートアップを特許訴訟から守り、連携する
- パテントプールの形成とオープンイノベーションによる知財権の獲得をねらう
- Eコマースのバリューチェーン全体を見越した知財の獲得とパートナー店舗等へのライセンスを通じ、顧客の事業価値を最大化
- 知財価値を多様な側面から評価する知財マネジメントを通じ、知財戦略を事業戦略にアライン
- 後発参入時においてもオープン&クローズ戦略を通じて顧客獲得に成功し、市場シェア1位を実現
- 経営計画の策定時に知財視点の他社情報を経営層に提供し、高度な判断を実現
- 特許・ノウハウ・ブランド・契約を組み合わせ、過酷な環境下での顧客の「体験価値」を最大化
- グローバル知財部門により知財戦略を統合しつつ、エリアごとの規制やマーケットのダイナミズムに対応する
- 「戦略知財部員」を養成し、事業戦略に踏み込んだインサイトを提供し新事業創造に貢献
- M&Aを契機に本社による知財機能の一元管理体制を構築し、社内リソースの最適活用を実現
- 社長直下の知財機能が成功確度の高い将来事業領域へのリソース配置等に寄与
- プロダクトライフサイクルに沿って権利活用方法を変化させる「Cカーブ」で高収益の実現を図る
- CDO主導のデジタルトランスフォーメーションを知財チームがサポート。大学や研究機関が有する技術の目利きの役割を担う
- 異業種企業意識した知財戦略を強化し、競争環境の変化に対応
- 顧客とのエコシステムを構築する協創知財戦略とアジャイルな活動を通じて、事業の高度化を目指す
- 知財部門が知財の観点から社会的インパクト・コストを算定し、研究の投資判断を実行
- 自社開発と技術ライセンスを駆使し、R&Dのスピードの向上と投資の抑制を実現
- 知財機能が主体的にM&Aの実施是非を判断し、企業価値・事業価値を最大化するM&A戦略に貢献
- 海外研究機関と「価値協創」のための合弁会社を設立し、パートナーと連携したイノベーション創造に挑戦
- 知財の出願と維持を厳選し、知財を適切に管理することでROIを最大化
- 海外進出に伴い知財チームの役割が拡大し、研究開発の実施可否の判断を担う
- 商標を活用した戦略的な自社ブランドの活用により、ブランド価値を向上
- 自社製品のデファクト化を目指し、主力製品を「知財ミックス戦略」により強力に保護
- 具体的な活動事例
- 新事業創造に資する知財戦略
- Capabilities 経営戦略とつながる知財部門の方向性
- 経営戦略とつながる「知財戦略」とは
- 今後求められうる、企業全体の知財機能の再構築
- 「知財部門」の人材・組織のあるべき姿
- 人材の採用・育成の施策例:知財部員を「外に開く」取組み
- 人材の評価・処遇の在り方:戦略的な活動の評価・管理
- 組織の位置付け:経営・事業戦略に近い組織配置・ミッション設計
- コミュニケーションの仕組化:経営層との「戦略」に関する日常的な対話
- 参考 Appendix 本事例集に関連する特許庁事例集等
この目次を見れば分かるように、様々な企業の知的財産戦略の概要を知ることができるようになっています。
ただ、残念なところは、1ページにまとめる必要があったためなのか分かりませんが、非常に抽象的な記載になっている点です。
この事例集だけを読んでも、各企業の知財戦略をそのままマネすることはできないと思われます。
したがって、この事例集で紹介されている知財戦略を自社に取り入れる際には、多くの試行錯誤が必要になるかもしれません。
このような欠点はありますが、これだけ多くの企業で実際に行われている知的財産戦略が紹介されている資料はないと思います。
知的財産戦略について悩まれている企業の方は、この資料を読んでみては如何でしょうか?
解決のヒントが見つかるかもしれませんよ!
弊所では、知的財産戦略の構築から実行等まで、知的財産戦略に関するPDCAサイクルのサポートを行っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。