TPP11の発効に伴う著作権法の改正について
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログでTPP12(※1)未発効のために「クマのプーさん」の著作権が切れたことを書きましたが、今度はTPP11(※2)の発効に伴って改正著作権法が施行されることになりましたので、今回はこれについて書きます。
平成28年12月9日に成立し、著作権法の改正が含まれた「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」は、TPP12が発効する日から施行されることになっていました。
ところが、アメリカがTPP12からの離脱を表明したために、TPP12が発効することがなくなってしまいました。
そこで、今度はTPP12の発効と共に施行される予定であった改正著作権法を、TPP11の発効と共に施行するようにした「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律」(TPP11整備法)が成立し、2018年7月6日に施行されました。
さて、このTPP11整備法に含まれている改正著作権法の内容ですが、次の通りとなっています。
- 著作物等の保護期間の延長
著作権、実演家の権利およびレコード製作者の権利が20年延長 - 著作権等侵害罪の一部非親告罪化
告訴がなくても公訴される可能性 - アクセスコントロールの会費などに関する措置
著作物等のアクセスコントロール等を権限なく回避する行為が刑事罰の対象 - 配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与
実演家およびレコード製作者に認められている使用料請求権の対象が、インターネット等から直接配信される音源にも拡大 - 損害賠償に関する規定の見直し
著作権等管理事業者の使用料規定により算出した額を損害額として損害賠償請求可能
これらの改正著作権法の詳細はこちら
これらの改正のうち、影響が大きいのは、1と2ではないでしょうか?
TPP11が発効されると、著作権等の存続期間が70年になります(70年の始期は権利によって異なります)。
これによって、TPP11が発効されると、新たな著作者の作品は、しばらくの間は青空文庫等には収録されないことになります。
また、販売中の漫画や小説本の海賊版を販売する行為や、映画の海賊版をネット配信する行為等は、権利者からの告訴がなくても検察によって公訴される可能性あります。
注意してください。
なお、漫画等の同人誌をコミケで販売する行為や、漫画のパロディをブログに投稿する行為等については、権利者からの告訴がなければ公訴されることはありません。
このように、TPP11の発効に伴って身近なところにも影響が出てきますので、注意しましょう。
弊所では、改正著作権法等のご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。
※1 TPP12とは、アメリカも含めた12カ国によって平成28年2月に署名された参加することを表明していた「環太平洋パートナーシップ協定」をいう。
※2 TPP11とは、TPP12参加予定だった国のうち、米国以外の11カ国によって平成30年3月8日に署名された「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」をいう。