独占禁止法に関する相談事例集(平成29年度)
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログでも取り上げた「独占禁止法に関する相談事例集」の平成29年度版が今年も公表されましたので、今回はそれをご紹介します。
独占禁止法に関する相談事例集は、公正取引委員会が毎年公表しているもので、今回ご紹介するものものは、平成29年度に受けた相談事例をまとめたものになります。
さて、今回は、この事例集に収録されている事例のうち、知的財産に関係する次の3つの事例についてご紹介します。
- 電子部品メーカの取引先事業者に対する専属契約義務付け
- プラットフォーム運営事業者による事故の競争者との取引制限
- 農業協同組合による商標権の行使
1.電子部品メーカの取引先事業者に対する専属契約義務付けについて
公正取引委員会は、『本件は、我が国の電子部品Aの製造販売市場において、約60%の市場シェアを有するX社が、Y社に対して、自己以外の事業者に対して技術支援をしないよう求めるものであるところ、
- 電子部品Aの不良品発生率の低減(=製造原価の低減)は、電子部品Aの製造販売に当たって重要であること
- 電子部品Aの不良品発生率の低減を実現するには、Y社による技術支援が必要であること
- 当該技術支援を行うことができる事業者は、事実上、Y社のみであること
から、X社の行為によって電子部品Aの製造販売市場から新規参入者や既存の競争者が排除される可能性があり、独占禁止法上問題となる恐れがある。』と評価しています。
製造装置メーカーは、クライアント(製品メーカー)に対して、その装置に関する技術支援をすることが多いと思いますが、上記のような市場状態の場合には、契約によって他社への技術支援を禁止することは独占禁止法上問題となる場合があるということになります。
したがって、クライアントから技術支援禁止する条項を要求された場合には、その要求を跳ねのける理由としてこの事例を使うことができます。
2.プラットフォーム運営事業者による事故の競争者との取引制限について
公正取引委員会は、『X社が、自らのプラットフォームを通じてソフトウェアを配信するP社に対し、特定の人気ソフトウェアについて、開発費用の一部負担等の見返りとして、当該ソフトウェアを一定期間自らのプラットフォームaのみにおいて配信するよう義務付けることは、独占禁止法上問題となるものではない。』と評価しています。
詳細は相談事例集を参照していただくとして、この事例では、絶対的な強者と思われたプラットフォーム運営事業者が要求した厳しい条件であっても、取引先(ソフトウェアメーカー)を取り巻く状況によっては独占禁止法上問題とならない場合もあることを示したことになります。
3.農業協同組合による商標権の行使について
公正取引委員会は、『X協同組合が、組合員に対し、自らが商標権を有する商標αを付して農産物Aを出荷する場合、X協同組合のみへの出荷を求めることは、独占禁止法上の問題となるものではない。』と評価しています。
この件についても詳細は相談事例集を参照していただくとして、この事例では、X協同組合の商標権の行使は、独占禁止法21条の規定が適用されるものと判断されました。
独占禁止法21条の適用条件は不明確だったのですが、この事例によって、公正取引委員会はこの事例の解説に記載されているような論理展開を行うということが分かります。
(この判断はあくまで公正取引委員会の判断なので、裁判所の判断とは異なる可能性がありますが、一つの目安にはなります)。
弊所では、知的財産に関する契約や権利行使において、独占禁止法も考慮した見解を出すようにしております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。