特許庁の先取り商標出願対策2
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログで、特許庁が、手続上の問題がある大量の商標登録出願に関連して、「手続上の瑕疵のある出願の後願となる商標登録出願の審査について」というプレスリリースを行ったと書きましたが、今回は法改正まで行ったので、それについて書きます。
具体的な法改正は、商標登録出願の分割要件(分割条件)に、後述する新たな要件を追加したというものです。
商標登録出願は、その手続が特許庁に係属している間(特許庁で取り扱われている間)は、1つの商標登録出願を2つ以上に分割して新たな出願をすることができるという制度(分割出願制度)があります。
そうすると、上述したような手続上の問題がある商標登録出願であっても、出願却下が確定するまでは、「特許庁に係属している」と解釈されるので分割出願できてしまいます。
この運用を悪用すると、手続上の問題がある商標登録出願について、特許庁から出願却下通知が届いた後でその商標登録出願を分割することで、理論上は、分割出願ができなくなるまで、ずっとその商標登録出願が存在してしまうことになります。
ちなみに、分割された出願(子出願)は、分割される前の出願(親出願)と同じ出願日に出願された別の商標登録出願として取り扱われることになるため、親出願の出願日以降に同一または類似商標(指定商品・役務も同一または類似の場合)を出願しても、登録されないことになってしまいます。
しかも、商標法上、子出願は親出願とは別出願となるため、子出願を出願却下するためには、別途出願却下手続を行う必要があり、すぐには出願却下することができません。
このような状況に対して、特許庁は、分割出願を行う場合には、従来の要件に加えて、「親出願の出願手数料が納付されていること」という要件を追加しました。
上述した手続上の問題がある商標登録出願については、出願手数料は納付されていないので(そもそも出願手数料が納付されていないことが問題ですので)、手続上の問題がある商標登録出願からは分割出願をすることができなくなります。
ちなみに、下図に示すように、この法改正の施行日は平成30年6月9日ですので、この日以降に出願された商標登録出願について適用されることになります。
出願手数料を支払わないで商標登録出願を行う出願人(手続に慣れていない人を除く)は非常に限られるので、特許庁は明言していませんが、手続上の問題がある商標登録出願を意図的に行っている出願人に対する対策だと思われます。
(先日、特許庁からも、このような出願人への対策だとのプレスリリースがありました。)
これは、手続上の問題がある大量の商標登録出願が、法改正まで行わなければならない程に、特許庁や他の出願人に迷惑をかけていたという証拠なのかもしれません。
特許庁が何らかの対応するには、それ相応の費用が発生しています。
現時点では違法ではありませんが、このような法の悪用は辞めてほしいですね。
弊所では、商標登録出願を途中からの代理も承っております。
上記のような手続上の問題がある商標登録出願によって登録できないという商標登録出願がありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。