ベンチャー企業と事業会社とが連携するのに役立つ資料

ベンチャー企業と事業会社とが連携するのに役立つ資料

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

現在(2017年12月)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を始めとする公的リスクマネーやベンチャーキャピタルが増え、以前に比べると、ベンチャー企業がスタートアップし易い環境が整いつつあると思います。

しかし、スタートアップよりも事業継続の方がもっと大変で、多くの企業が、資金不足により市場から退場しています。

特に、ベンチャー企業は、社会的な信用が少ないために顧客が増えず、売上が上がらない一方、研究開発費に多額の費用がかかります。握手する人のイラスト

その差額の資金をベンチャーキャピタル等から入れてもらう方法も一つですが、事業の出口等も見据えて、事業会社と連携する方法もあると思います。

その時に役立つ資料として、経済産業省が取りまとめた資料(事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き)をご紹介します。

この手引きは、事業会社の社外連携責任者、ベンチャー企業の役員、大学関係者、法務・知財の専門家、コンサルタント等を委員とする勉強会等を通じてまとめられたものとなっています。

さて、この手引きの内容ですが、次のようになっています。

  1. はじめに
  2. 「連携のための手引き」の検討を行った勉強会委員からのメッセージ
  3. 「連携のための手引き」の全体像
  4. PART1 連携のための手引き
    1. SECTION1 連携の現状とぶつかりやすい壁
    2. 自己診断シート
    3. 企業間の連携ステップごとの先行企業の取組み
      1. 先行企業の取組事例リスト
      2. SETP1 戦略策定~オープンディスカッション
        1. 研究開発型ベンチャー企業を発掘・育成するための取組み
        2. 社外と連携する事業領域を決めるための考え方・ポイント
        3. 社外連携に関する目標やインセンティブを設定するためのポイント
      3. STEP2 契約交渉
        1. 双方が納得できる円滑な契約交渉・締結のためのポイント
        2. 短期資金獲得だけでなく将来の事業化を見据えた権利交渉のポイント
      4. 契約開始~次フェーズの意思決定
        1. 外部の視点を取り入れた仮説検証の仕組み
        2. 既存顧客や品質基準等の制約を乗り越えて製品・サービスをスピーディーに市場に出すための取組み
        3. 信頼関係を構築しながらスピーディーな仮説検証と投資意思決定を実現するための仕組み
      5. STEP4 議場シナジー発揮/再チャレンジ
        1. 提携の早期見直しにより痛手を最小化するための契約規定
        2. 次なるチャレンジにおける成功確率向上のための取組み
        3. 相談窓口・ツール・公的支援制度等
  5. PART2 アンケート結果
    1. 調査概要
    2. アンケート結果(サマリ)
    3. データ集【事業会社編』
    4. データ集【研究開発型ベンチャー企業編】

そして、この手引きの中で、研究開発型ベンチャー企業との連携の際に先行する事業会社がぶつかった割合が高いものとして、特に次の10の壁を挙げています。

  1. ベンチャー企業との連携の意思はあるが、技術や人材の面で有望なベンチャー企業の数が乏しい
  2. ベンチャー企業のプロジェクト責任者とは意気投合するが、自社とベンチャー企業間の“社内文化・仕事の進め方の違い”やベンチャー企業側の“与信・情報不足”により意思決定者同士の具体的な討議に至らない
  3. ベンチャー企業の技術を活用する領域が曖昧であり、コンタクトしても大抵の場合で挨拶止まりになってしまう
  4. ベンチャー企業の技術を探索・採用するインセンティブが乏しく、社外連携に向けた活動が活性化しない
  5. 連携の成果である知的財産の帰属やライセンスの内容で合意できない
  6. 当初の技術仮説が十分に検証されずにプロジェクトが停滞してしまう
  7. 当初のビジネスモデル仮説が十分に検証されずにプロジェクトが停滞してしまう
  8. 自社の新規投資意思決定に時間がかかり過ぎ、マーケットをリードできなくなってしまう
  9. 明確な撤退基準がなく、成功の見込みが薄くなった連携プロジェクトが継続され続けてしまう
  10. チャレンジによる教訓が社内でノウハウ化せず、類似の失敗を繰り返しやすい

これらを見ると、確かにありがちな理由だと思います。
ただ、この手引きの良いところは、このような壁に対して、先行企業の取組事例が紹介されており、解決策がいくつか提示されているところです。

提示されている解決策ですべてが解決するということはないかもしれませんが、少なくとも解決策の糸口になるかもしれません。

これらの解決策は、別々の書籍などで触れられていたかもしれませんが、体系的に簡潔にまとまっているものは他にないのではないでしょうか?

しかも、タイトルに「初版」と記載されていることから、改訂版を予定しているようです。
日本のベンチャーエコシステムを推進するためにも、このような手引きを継続して公表して欲しいと思います。

事業会社と連携したいと考えているベンチャー企業の方だけではなく、ベンチャー企業と連携したいと考えている事業会社の方も、是非この手引きをご覧になってください!

なお、弊所では、ベンチャー企業のサポートにも力を入れています。
ベンチャー企業の方のみならず、ベンチャー企業と提携したい事業会社の方で、連携について何かありましたら、是非弊所にご相談ください。

今日は以上です。

この記事を書いた人

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