ライセンス契約書を作成する際に役立つ資料30
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
今回は、リサーチツール特許のライセンスに関する資料(ライフサイエンス分野におけるリサーチツール特許の使用の円滑化に関する指針)をご紹介します。
この資料は、総合科学技術会議によって平成19年に取りまとめられたものです。
リサーチツール特許と言えば、10年以上前に話題となったテーマですが、先日クライアントから相談を受けたので、現在でも重要なテーマだと思い、この資料をご紹介することにしました。
ところで、「リサーチツール特許」をご存知でしょうか?
ライフサイエンス関係の仕事をされている方であれば分かると思いますが、「リサーチツール特許」とは、ライフサイエンス分野において研究を行うための道具として使用される物または方法に関する特許です。
ライフサイエンス分野では、特定の技術(例えばスクリーニング方法等)を使わないと研究が進展しないというケースがあります。そして、その特定の技術が特許されていると、ライセンスを受けなければその技術を使うことができず、研究開発に支障が出てしまうことがあります。
ここで、特許法に詳しい方は、「研究」に使われるのだから特許法69条1項が適用され、たとえ特許されている技術であっても自由に利用できるはずでは?と思われる方もいるかもしれません。
しかし、特許法69条1項の「試験又は研究」という文言は、「特許発明それ自体を試験又は研究の対象とする場合の試験又は研究」と解釈するのが通説とされています。
したがって、リサーチツール特許のように、その技術自体の研究に使われるのではなく、まさしく研究を行うための道具(ツール)として利用する場合には、上述したように69条1項の「試験又は研究」には該当しないため、ライセンスを受けずに利用すると特許権侵害となってしまうのです。
このような問題があるため、総合科学会議において、リサーチツール特許に関して、特許制度による保護と活用のバランスのとれた実務運用が重要との認識の下、この指針がまとめられました。
さて、この指針ですが、次のような目次となっています。
- はじめに
- 本指針の目的
- 基本的な考え方
- 総合データベースによる情報の公開
- 本指針の普及等
詳細は、この指針を読んでいただければと思いますが、この指針によれば、リサーチツール特許の権利者は、他者から研究段階において特許を使用するための許諾を求められた場合には、原則としてその求めに応じて非排他的なライセンスを供与するとされています。
そして、そのライセンスの対価および条件についても、円滑な使用を阻害することがないよう十分に配慮するとされています。
(ちなみに、大学等の間でのライセンス供与の場合には、無償が望ましいとされています。)
この指針が実務でどこまで参考にされているか分かりませんが、リサーチツール特許を利用する場合には、是非この指針を読んでください。
ところで、この指針に記載されているリサーチツール特許の総合データベースは、こちらです。
気になるリサーチツールがあったら、まずはここで特許が存在するか検索してみては如何でしょうか?。
弊所では、ライフサイエンス分野の共同研究契約、特許出願、ライセンス契約、特許権侵害等について一貫してサポートしております。
ライフサイエンス分野に関しまして何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。