TPP12未発効で「クマのプーさん」の著作権切れ
今回は、TPP12が未発効になったために、「クマのプーさん」の原作の著作権が切れたました。その結果、新たな日本語訳本が発売されたことについて書きます。
「クマのプーさん」といえば、ディズニーの黄色い熊のキャラクターを思い浮かべる方が多いと思いますが、このキャラクターは、1926年に発表されたA.A.ミルンの児童小説(英国文学)を元に作られました。
原作であるミルンの児童小説は、著作権が2017年5月21日で満了※1し、パブリックドメインとなりました。
実は、米国が離脱を表明したということで話題になった環太平洋連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement, TPP12)には、著作権の保護期間の延長が盛り込まれていましたので、TPP12発効後は、日本でも著作権が20年延長されることになっていました。
ところが、結局TPP12が発効されなかったので、「クマのプーさん」の原作の著作権も延長されず、満了になったという訳です。
国際政治って、こんな身近なところにも影響があるのですね!
さて、パブリックドメインとなった「クマのプーさん」ですが、角川文庫から新訳本が早速発売されました。
ディズニーのキャラクターとは大分違いますが、表紙にはプーさんの可愛いイラストが描かれています。
今後は、角川文庫だけでなく、多くの出版社から表現が少し異なった新訳「クマのプーさん」が出版されるかもしれません。
そうすると、これからの子供たちは、「クマのプーさん」という題名では読んだ本を特定できず、『どの出版社の「クマのプーさん」を読んだの?』という会話がなされるのかもしれませんね。
文化的な側面では、様々な表現の「クマのプーさん」があった方が良いのでしょうが、ちょっと面倒くさいかもしれません。
ところで、今回著作権が満了したのは、あくまで原作の児童小説だけですので注意してください。
ディズニーのキャラクターだけでなく、既に出版されている日本語版「クマのプーさん」の文章やイラストには、別個の著作権がありますので、勝手に利用すると著作権侵害になります。
著作権は複雑な権利ですので、利用される際には注意してください。
弊所では、著作権に関するご相談も承ります。
何かありましたら遠慮なくお問い合わせください。
※1 日本国著作権法では、著作権は、原則として著作者の死後50年を経過するまでの間存続すると規定されています。しかし、「クマのプーさん」には戦時加算※2が適用されたために著作権の存続期間が延長され、最終的に2017年5月21日に著作権が満了しました。
※2 戦時加算とは、戦争期間に相当する期間を、通常の著作権の保護期間に加算することで、戦争により失われた著作権者の利益を回復しようとする制度をいう。
追記:TPP11が発効されることになったので、TPP11との違いを明確にするため、「TPP」を「TPP12」に修正(2018/11/12)