ライセンス契約書を作成する際に役立つ資料29
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログで、「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン」をご紹介しましたが、これに関連する資料(データの利用権限に関する契約ガイドライン)をご紹介します。
このガイドラインは、「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン」と同様に、経済産業省が取りまとめたもので、事業者間でデータ(POSデータ、気象データ等)の利用権限が明確となっていないが故にデータ流通が進まないという課題を解決すべく、事業者間の契約においてデータの利用権限を公平に取り決めるための手法や考え方が示されています。
さて、このガイドラインの内容ですが、次のような目次となっています。
- 本契約ガイドラインの目的
本契約ガイドラインの構成
本契約ガイドラインの対象 - 第1 基本的な考え方
- データが広く利活用に供される観点
- ケース毎に公平・適正に利用権限を定める観点
- 第2 契約前段階での合意形成プロセスと利用権限の定め方
- 申入れ、事前確認
(1) データの利用権限を契約に定めることの申入れ
(2) 合意形成プロセスと条項イメージの確認 - データの選定
(1) 各当事者が求めるデータの選定
(2) データカタログ等の作成、提示、意見調整
(3) 想定し得なかったデータ
(4) 問題となりやすいデータの扱い - 利用権限の決定
(1) 利用権限の配分について
(2) 利用条件の設定について
(3) 利用権限を契約で定めることの効果
(4) 利用権限を定めることができないとき - 条項の作成
- 申入れ、事前確認
- 第3 契約における規定事項等
- データの特定
- 当事者のデータの利用権限
2-1 データの利用権限の配分
2-2 免責
2-3 データの非保証 - 特約条項(参考)
3-1 第三者提供を制限するとき(事前同意を要する例)
3-2 利用に係るコスト分担を定めるとき - 関係者が複数の場合の処理
- データの提供方法等
- データ形式
- データの秘密管理
- 共同利用データに関する取扱い
- 対象データの変更
- 契約期間中におけるデータの利用権限の取決め
- 契約終了時の取扱い
- その他
ケース別の適用例
適用例1
適用例2
この目次を見れば分かりますが、このガイドラインは、次の3つのパートで構成されています。
- 基本的な考え方
- 契約前段階の合意形成プロセスと利用権限の定め方
- 契約における規定事項等
まず、「基本的な考え方」では、このガイドラインの基本的な考え方である、①データが広く利活用に供される観点、②ケース毎に公平・適正に利用権限を定める観点について解説されています。
次に、第2の「契約前段階の合意形成プロセスと利用権限の定め方」には、契約を締結する前に確認しておくべき事項について、理由も含めて解説されています。
この段階で決められたことが、次の条項案に反映されることになるので、重要な部分となります。
最後に「契約における規定事項等」で、データの取扱いに関する条項案が提示されています。
このガイドラインでは、データの利用に関する次の条項例が、[ポイント]・[解説]と共に具体的に記載されています。
- 定義
- データの利用権限の配分
- 免責
- 継続的創出に対する非保証
- 利用条件等
- 事前同意
- 分担金の支払い
- 関係者が複数の場合の処理
- データの提供等
- データの形式
- データの秘密管理
- 共同利用データに関する取扱い
- 対象データの変更
- 契約期間中におけるデータの利用権限の取決め
- 契約終了時のデータの取扱い
- その他
これらの条項を実際の契約書にそのまま使うことはできないかもしれませんが、[解説]に各条項の考え方も記載されており、修正しやすいと思いますので、条項を作成する際に参考になるのではないかと思います。
これらの条項に関し、現時点で解説されている本等はほとんどないと思いますので、このガイドラインは貴重な資料となっております。
ライセンス契約等にデータの利用に関する条項を規定する必要がある場合には、是非参考にしてみてください。
弊所では、データの利用を含んだ知的財産に関するライセンス契約書等のご相談も承ります。
何かありましたら、是非ご相談ください。
今日は以上です。