こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
カルタヘナ法という法律をご存知でしょうか?
遺伝子組み換え実験に関係している方以外はあまり馴染みのないかもしれません。
私も、独立行政法人産業技術総合研究ぞ(現国立研究機関産業技術総合研究所)に勤務していた時に初めてこの法律を知りました。
正式名称は、『遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」といい、遺伝子組換え生物などの取扱いの規制に関する国際的条約「カルタヘナ議定書」の国内での実施に必要な取扱いを定めた法律』になります。
さて、この法律ですが、環境省以外に、経済産業省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省の6つの省が関わっています。
そして、具体的な規制や手続等の詳細な部分は施行規則等に定めているため、全体像が分かりにくくなっています。
一方、カルタヘナ法の解説書としては次の「よくわかる!研究者のためのカルタヘナ法解説」がありますが、現在は入手が難しいようです(弊所は所有しております)。
そこで、その代わりとして役立つ資料が「カルタヘナ法ガイドブック」です。
このガイドブックは、一般財団法人バイオインダストリー協会(JBA)が取りまとめたもので、カルタヘナ法の概要がコンパクトにまとめられています。
目次は、次のようになっています。
- はじめにーカルタヘナ法成立の経緯
- 遺伝子組換え生物に関する基礎知識
- カルタヘナ法に関する基礎知識
- 第一種使用等における留意点
- 第二種使用等における留意点
- 輸出入の留意点
- 譲渡等の留意点
- その他の重要な留意点
- Q&A
- 法律及び施行規則対照表
- ダニ主基準省令(産業上の使用等)
- 告示関係(抜粋)
- カルタヘナ法関係連絡先
最新版が2006年8月に改訂されたものなので、内容としては少し古い部分があるかもしれませんが、カルタヘナ法の担当者となった方が最初に読むものとしては良いものではないかと思います。
特に、最初の部分に記載されているカルタヘナ法の体系図は、一目でどのような法体系となっているかを概観できるので、まずご覧になった方がいいと思います。
また、カルタヘナ法における用語の定義もまとめられています。法律用語は、研究者が使っている用語とは意味が異なる場合がありますので、この部分も確認しておいた方がよいと思います。
たとえば、「生物」という用語については、カルタヘナ法第2条1項に、
「この法律において「生物」とは、一の細胞(細胞群を構成しているものを除く。)又は細胞群であって核酸を移転し又は複製する能力を有するものとして主務省令で定めるもの、ウイルス及びウイロイドをいう。 」
と規定されていますが、このガイドブックでは、
「この中でいう「一の細胞又は細胞群」には、省令において、分化する能力を有する、又は分化した多細胞生物の細胞等(個体及び配偶子を除く)のうちで、自然条件において個体に生育しないものは含まれません。また、ヒトの細胞等も除外されています。」
と補足されており、各用語が分かりやすくなっています。
また、遺伝子組換え生物等の法律上の位置付けを調べる簡易チャートも記載されています。
したがって、これを使うことによって、使用する予定の遺伝子組換え生物等が法律上どのような規制を受けるか簡単に把握することができます。
このように役立つ情報が記載されていますので、このガイドブックでカルタヘナ法の概要を理解した上で、より詳細な情報が必要な場合には、各省庁のカルタヘナ法関連のHPを調べてみては如何でしょうか?
なお、2017年1月24日に「カルタヘナ法相談会」が開催されました。
この相談会には私も参加いたしましたが、このような相談会に参加してカルタヘナ法に関する最新の情報を入手してください。
弊所では、カルタヘナ法に関するご相談も承ります。
カルタヘナ法に関して何かありましたら、弊所まで是非お問い合わせください。
今日は以上です。