著作権に関する判例をまとめた専門誌が著作権侵害で出版を差し止められた!? ・・・その後2
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
以前のブログ(ブログ1、ブログ2)で、「『著作権判例百選』(第5版)」(以下「本件雑誌」という。)の出版差止の仮処分が認められたと書きましたが、その後、さらに動きがありましたので、それについて書きます。
結論からいうと、仮処分決定が取り消されました!
その結果、株式会社有斐閣のプレスリリースによると、2016年12月13日に『著作権判例百選〔第5版〕』が販売されるようです。
(ちなみに、このプレスリリースには、昨年の秋に校正作業を完了しているので、各判例の解説はその時点のものになると、断り書きが記載されています。)
さて、今回の保全抗告事件(平成28年(ラ)第10009号)の決定文は、本文だけで55頁にも及ぶ長大なものとなっています。
まだ決定文を完全に読み切れてはいないのですが、「著作権判例百選〔第4版〕」を作成する際に交わされたやり取りの詳細が記載されているようです。
裁判所は、それらのやり取りを認定し、最終的に、仮処分を求めた大学教授は、「その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむしろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるものと理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる」と認定し、「そうである以上,法14条による推定にもかかわらず,相手方をもって本件著作物の著作者ということはできない」と判断しています。
その結果、その大学教授は、「本件著作物の著作者でない以上,著作権及び著作者人格権を有しないから,抗告人に対する被保全権利である本件差止請求権を認められない。
したがって,その余の点につき検討するまでもなく,相手方による本件仮処分申立ては理由を欠き却下されるべきものであるから,これを認めた本件仮処分決定及びこれを認可した原決定をいずれも取り消し,本件仮処分申立てを却下する。」という決定になったようです。
前回のブログで紹介した東京地裁の決定では、『債権者(大学教授)が編集著作物たる「『著作権判例百選』(第4版)」(以下「本件著作物」という。)の著作者の一人であるか』という点について、「本件著作物の編集著作者であるとの推定を覆すことはできない」と判断しましたが、今回の知財高裁の決定では、「著作権判例百選〔第4版〕」が作成される過程での大学教授の具体的な関わり度合いを細かく認定し、総合的に検討した上で「本件著作物の著作者ということはできない」と判断したようです。
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今日は以上です。