ライセンス契約書を作成する際に役立つ資料25
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
今回は、公正取引委員会が公表した「独占禁止法に関する相談事例集(平成27年度)をご紹介します。
公正取引委員会は相談事例集を毎年公表しており、今回ご紹介する事例集は平成27年度に受けた相談事例をまとめたものになります。
公正取引委員会がまとめた資料として、以前のブログで紹介した「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」があります。
この「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」には、公正取引委員会の考え方がコンパクトにまとめられており、全体を理解することには役に立ちます。
しかし、なかなか具体的な事案に適用し難いという問題があります。
その時に、今回の相談事例集が役に立ちます。
この相談事例集では、実際の相談に対する公正取引委員会の見解が記載されていますので、公正取引委員会の考え方がより具体的に分かるのではないでしょうか?
さて、平成27年度版では、ライセンス契約に関する相談(【技術取引に関するもの】)として次の2例が掲載されています。
- 商標権を有する組合が、商標の使用の許諾に伴い、商標を付した製品の製造販売業者に対して安売り広告を禁止すること
- 複数の事業者がパテントプールを形成し、医療用機器の事業化に必要な知的財産をライセンスするに当たり、パテントプールの非参加者に対する実施料を、参加者に対する実施料よりも高めに設定すること
1.について
公正取引委員会は、『組合が、商標を付した製品の安売り広告を行わないことをライセンス契約の更新条件とすることは、当該商標を付した製品の製造販売業者間の価格競争が阻害され、当該商標を付した製品の販売価格が維持される行為であり、独占禁止法21条に規定される「権利の行使と認められる行為」とは評価できないので、独占禁止法上問題となる』と評価しています。
2.について
公正取引委員会は、『①共同研究開発へお貢献実績の有無を考慮した実施料の設定であり、合理的な理由があると考えられること、②当該パテントプールを構成している事業者以外にも、先行しているグループが進めている共同研究開発があること、③標準化に伴うパテントプールとは異なり、規格を採用する多数のライセンシーの事業活動に重大な影響を及ぼすものではないことから、独占禁止法上もんだいとなるものではない』と評価しています。
詳細は、相談事例集を参照していただくとして、ある程度分かり易い判断基準を示してくれていると思います。
もし同様な条件でのライセンス契約を検討する場合には、参考になるのではないでしょうか?
なお、この事例集での見解はあくまで公正取引委員会のものですので、実際に裁判では異なる判断になる可能性があるので、留意してください。
ただ、独占禁止法に関する判例は少ないので、この法律を所管する公正取引委員会の見解は貴重なものと思われます。
ライセンス契約書を作成する際には是非参考にしてみてください。
なお、ライセンス契約等に不安がある方は、是非弊所にご相談ください。
今日は以上です。