共同研究契約書を検討する際に役立つ資料7
こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。
主にライフサイエンス系の共同研究では、単なる情報だけでなく、遺伝子・細胞・幹細胞・ハイブリドーマ・動物・微生物・組織・タンパク質等の有体物自体を共同研究相手方に提供する場合があります。
そこで、今回はそのような有体物を提供する際に締結されるMTA(Material Transfer Agreement:研究成果有体物移転契約、物質移動合意書)を締結する際に役立つ資料を紹介します。
ちなみに、MTA(Material Transfer Agreement)とは、研究材料となる物質の移転(貸借、分譲、譲渡など)を行う際に締結される契約をいいます。
今回紹介する資料は、以前にもこのブログでご紹介した医学系大学産学連携ネットワーク協議会のMTA WGが取りまとめた「MTAハンドブック ーバイオマテリアルを中心にー」です。
ライフサイエンス系では、他者の研究成果有体物(マテリアル)を利用することが多く、MTAがスムーズに締結できないと研究成果に大きな影響を与えると言われています。
また、ライフサイエンス系でなくても、大学等の研究機関で得られた新規物質を企業に技術移転する際の前段階としてMTAを締結することも多いのではないかと思います。
実際、私が産総研で技術移転業務を行っていた時には、共同研究やライセンス契約等の前に、企業との間でMTAを締結し、その新規物質等が企業が求めている性能を有しているか確認してもらっていました。
企業の方も、論文や研究発表会の情報ではなく、実際の新規物質等を触ってみて、技術導入すべきか否かを判断してたようです。
(大学等からの技術移転を考えるときは、MTAで実際の”もの”を触って判断することをお勧めします。)
さて、MTAハンドブックの内容ですが、マテリアルの所有権の帰属、知的財産権の取扱い、守秘義務や免責などの説明がなされており、共同研究契約書中にMTAに関する条項があった場合は、その条項の意味やどのような点に注意すべきかが分かると思います。
特に、実施権および交渉権の記述は、共同研究成果の事業化を考えるときに非常に重要になりますので、 是非確認して共同研究契約書に反映させてください。
また、このMTAハンドブックには、MTAから生ずる知的財産の「共有の要求に関する判断例」が記載されています。
アカデミアのMTA交渉担当者向けの記述のようですが、記載されている考え方はそれ以外の人にとっても役立つのではないかと思います。
MTAに関する情報は、市販されている書籍にもあまりありませんので、この資料は非常に有益なものではないでしょうか?
大学等からの研究機関との共同研究契約や、ライフサイエンス系のライセンス契約を考えている方は一読されることをお勧めいたします。
弊所では、共同研究契約書に関するご相談も承ります。
共同研究契約等に不安がある方は、弊所に是非ご相談ください。
今日は以上です。