美容院で客に本を閲覧させることは著作権法上問題とならないのか?

美容院で客に本を閲覧させる行為は著作権法上問題とならないのか?

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

先日、著作権の講座に参加しました。

そのときに「美容院や診療所などで、客に本を閲覧させる行為は著作権法上問題とならないのか?」という議題がありました。

 

この場合、著作権法26条の3で規定された貸与権が問題となってきます。

貸与権とは、「映画以外の著作物について、その複製物を無断で公衆に貸与されない権利」のことです。

 

美容院等における本の閲覧ですが、結論としては、「店内での本の貸し出し」については著作権侵害ではないと解釈されています。

美容院などでの本(雑誌)の閲覧は、短い待ち時間だけに限られますし、本の売り上げに大きな影響を及ぼすことも無いと思いますので、問題ないという考えも成り立つと思います。

 

ところで、この問題についていろいろ調べてみると、実は複雑な背景があることがわかりました。

貸本サービスについては、著作権法改正により2005年から貸与権の適用が認められるようになりました。

その頃、漫画喫茶やブックオフなどの中古書店チェーンの存在が大きくなり、それまでは黙認していた出版業界のロビー活動があったようです。

 

今では、書籍レンタル業者からレンタル使用料を徴集し著作権者に還元するという制度が整っています。

出版物貸与権管理センター(RRAC)のサイトをご参照下さい⇒ http://www.taiyoken.jp/rental.html

 

当然、漫画喫茶についても、貸与権の適用対象とする動きがあったわけですが、業界団体(日本複合カフェ協会)が、「まんが文化の発展のため」という名目で、漫画家側に一定額を支払うことで、一応片が付いたようです。

また、文化庁の「店外への持ち出しを認めない限り著作権法の貸与にはあたらない」(2007年)という発表もあり、店内での貸し出しについては、貸与権の適用範囲外と解釈されています。

 

こちらのサイトにこの辺の経緯が記載されていますので、ご参照下さい。

⇒ http://blog.livedoor.jp/inthedark/archives/52054464.html

 

このような背景のもと、美容院や診療所などにおいて、本を客に閲覧させる行為についても、持ち出しではなく、店内での閲覧であれば貸与権の適用範囲外という解釈となっているというわけです。

すごく複雑な問題でした。

今日は以上です。

 

この記事を書いた人

鈴木 徳子