「新幹線おもちゃ」の販売は新幹線の意匠権侵害となるか?
こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
昨日の記事に関連して、今日も新幹線ネタです。
意匠法には、意匠権の効力について「業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する」と規定されています(意匠法23条)。
要するに、同一のみならず類似の範囲にまで効力が及ぶということなのですが、意匠の「同一又は類似」とはどういうことなのでしょうか?
意匠は「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの組合せ」(意匠法2条1項)であり、物品の形態のことをいいます。したがって、意匠の「同一又は類似」は、物品と形態の両面から「同一又は類似」に該当するかどうかを判断することになります。
物品と形態の双方が同一の場合を「意匠の同一」といい、物品が同一又は類似していて、形態が類似している場合を「意匠の類似」といいます。
さて、本題に入りますが、新幹線や自動車などの形態(デザイン)は、おもちゃにそのまま使われることがよくあります。男性なら、幼少の頃、本物そっくりのミニカーで遊んだことのある方が多いのではないでしょうか。
ここで、新幹線「のぞみ」そっくりのデザインのおもちゃが、玩具メーカーから販売されたケースを考えてみます。
この場合、玩具メーカーの行為は「のぞみ」の意匠権者であるJR東海及びJR西日本の意匠権を侵害することになるのでしょうか?
(本物の)新幹線「のぞみ」の物品は意匠法上「旅客車」に該当し、おもちゃの新幹線の場合は「電車おもちゃ」に該当します。「旅客車」と「電車おもちゃ」では物品が相違します。
したがって、形態が同一であっても物品が非類似であり、「意匠非類似」ということになります。
「意匠非類似」ですから、JR東海及びJR西日本の意匠権を侵害しないということになります。
ところで、新幹線おもちゃの出現を想定したのだと思いますが、JR東海およびJR西日本は、指定物品「電車おもちゃ」についても画像デザインの意匠権を取得しています(登録第1239533号)。
今日は以上です。
※画像引用先:特許電子図書館