お酒の原産地表示を有する商標の扱い

 

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

今日は「お酒の産地表示を有する商標」に関する異議申立事件のご紹介です。

 

以前も、お酒の産地に関する商標の記事を書きましたが、商標法上の取り扱いは次のようになっています。

1. 一定のぶどう酒又は蒸留酒の産地を有する商標であって、当該産地以外のぶどう酒又は蒸留酒を指定商品とする商標

⇒ 商標法4条1項17号の規定により拒絶

2.一定のぶどう酒又は蒸留酒の産地を有する商標を、ぶどう酒又は蒸留酒とは無関係の商品(例えば「被服」)を指定商品とする商標

⇒ 商標法4条1項7号の規定(公序良俗規定)により拒絶

 

今日、ご紹介する事案は、登録商標「Macka 634 wine/Bordeaux」(登録No.5535476)に対する異議申立事件です(異議2013-900048)。

指定商品は、第33類「フランス国ジロンド県内の限定地域産のぶどう酒」です。権利者は個人です。

この登録商標に対し、異議申立をしたのがフランスの国立原産地・品質研究所です。

 

異議理由としては、「Bordeaux」という表示は、厳格に管理統制されている原産地統制名称であり、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用するに適さず、また国を挙げてぶどう酒の原産地名称または原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあり、国際信義に反するため、商標法4条1項7号に該当するというものです。

しかし、特許庁は、本件商標はその構成中に「Bordeaux」の文字を含むとしても、指定商品が「フランス国ジロンド県内の限定地域産のぶどう酒」であることから、「Bordeaux」の高い名声・信用・評判へのフリーライド、希釈化のおそれはなく、また商標権者が自己の商標として登録し使用するに適さないともいえないと判断し、異議申立人の主張を認めませんでした(本件商標は登録維持)。

 

特許庁で公表されているWTO加盟国により保護されているぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示リスト(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/data2.htm)によりますと、「BORDEAUX」は「ジロンド県内の限定地域(フランス)」を産地とする「ぶどう酒」の原産地名称であることが明確に記載されています。

本件商標は、指定商品は「フランス国ジロンド県内の限定地域産のぶどう酒」ですから、原産地表示の冒用ではないと判断されたということです。

 

今日は以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

鈴木 徳子