こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
今日は、昨日の記事の原告が訴訟を提起したもう一つの事件をご紹介します。(大阪地裁平成25年1月24日判決 平成24年(ワ)第6892号)
原告は大阪市で美容室「Caché」を開店しており、役務第44類「美容、理容」を指定する商標「Cache」の権利者です(商標登録第5441186号)。
被告は、岐阜市で下記標章を使用した美容室を経営していました。被告店舗はウエブ上で「カシェ」として紹介されていました。
原告は商標権侵害のかどで被告を訴え、不法行為に基づく損害賠償を求めました。
これに対し被告は、(原告の申し入れを受けて)自主的に被告標章の使用を止めており、原告に損害は発生していない旨を主張しました。
上記(画像)の被告の標章は原告の登録商標と類似するものです。しかし、裁判では、原告に何ら損害が発生していないとして、使用料相当額の賠償も認めず原告の請求は棄却されました。
その理由の要点は次のとおりです。(下線部は加筆)
●原告の店舗は関西のヘアサロンを紹介した雑誌等を中心に広告宣伝されていたことが認められるが、これらの雑誌では同時に多数の美容室が紹介されており、原告の店舗はそのうちの一つにすぎず、原告商標が関西圏でも他の美容室と差別化を図るほどの強い
顧客吸引力を有していない
●大阪市の原告が、被告の岐阜市で店舗展開や営業活動をしていたとは認められず、美容室の商圏がそれほど広域ではないことを考慮すると、原告商標は被告の地域では顧客吸引力はない
●被告は被告標章を強調して広告宣伝は行っておらず、被告の売上げは被告自身の営業活動によるものであり、被告標章がこれに特に寄与したとは認められない
いずれにせよ、今回の事件で、被告は損害不発生の抗弁は認められたものの、自分の店舗名の使用を中止せざるを得ませんでした。
今日は以上です。