こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
今日は、先日の記事に引き続き、敬称の有無が商標の類否判断に与える影響について考えてみます。
先日は、敬称を付加した商標が、付加しないものと類似であると判断されたケースでしたが、今日は、非類似と判断されたケースをご紹介します。
商標拒絶査定不服審判(不服2010-24524)です。
「ぜんだまくん」という商標を第31類商品を指定して出願したところ、審査では下記の登録商標を引用されて拒絶査定となりました。
●登録第4857863号商標「善玉」(第29類・第32類商品を指定)
これに対し、出願人は拒絶査定不服審判を請求しました。
審判では、「人名以外の語に、同輩及び同輩以下の人の氏名に添えて呼びかけとして用いられる「くん」、「君」等の語を結合して擬人化する用法があり、このような場合、両語を分離すべき特別の事情がないときは、全体として擬人化された造語を形成したものと理解・把握されるものとみるのが相当である。また、他に、本願商標は、その構成中「ぜんだま」の文字部分のみを分離抽出し検討しなければならない事情も見いだせない。」として、
「ぜんだまくん」を一体不可分の商標と判断し、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標と判断し、原査定を取消しました。
擬人化されたものを表す造語と判断されるかどうかがポイントのようです。
これまで見てきたとおり、「くん」などの敬称を付加した商標が、つけない商標と類似と判断されるかどうか、明確な判断基準はなく、審査官の主観的判断に委ねられることになります。
しかし、近年の傾向としては、今日ご紹介したケースのように、敬称を付加した商標が一体不可分と判断されて、敬称なしの商標と非類似であると判断されるケースが多いような気がします。
今日は以上です。