こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
2020年の夏季オリンピック開催地の決定間近(日本時間の9月8日に決定)とあって、巷ではその話題でもちきりですね。
今日は、ちょっと古いオリンピックネタを書こうと思います。
2006年トリノオリンピックで荒川静香さんがフィギュアスケートで金メダルを取ったことを覚えていらっしゃいますか?
荒川さんのすばらしい演技、ブルーの衣装、トゥ-ランドットの音楽、全てがマッチして感動的でしたね。このとき荒川さんが演じた技「イナバウアー」は2006年の流行語大賞にも選ばれました。
当時、某ビール会社が「イナバウアー」(標準文字)を酒類(第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」)を指定して商標出願したことは随分と話題になりました。
荒川さんの金メダル獲得は日本時間の2006年2月24日でしたが、商標出願日は2006年3月3日ですので10日も経過しないうちに出願したことになります。
この商標出願は2007年2月に拒絶査定が下されております。報道の内容によると、商標法4条1項8号及び4条1項7号の規定に基づき拒絶されたと思われます。
そもそもイナバウアーは、現存するドイツのスケーターであるイナ・バウアーさんの名前ですから、本人の承諾なく他人の氏名等は登録できないとする商標法4条1項8号に該当したのでしょう。
もう一つは、一私人の商標として独占的使用を認めることが公序良俗違反に該当するということで商標法4条1項7号が適用されたようです。
ちなみに、「イナバウアー」という語を含んだ商標「イナバウアーフレーム」が商品「眼鏡」(第9類)を指定して登録されていますが(登録第5126189、権利者(株)メガネセンター)、特許庁の審査では一旦商標法4条1項7号を適用して拒絶査定となっております。しかし、出願人が拒絶査定不服審判を請求して、最終的に登録されております。
「イナバウアーフレーム」は一連一体の商標で、「イナバウアー」の称呼・観念が抽出されないため、商標法4条1項7号には該当しないと判断されたのでしょう。
今日は以上です。